【法人設立】決算期はいつにすべきか?(経営・税務調査・資金調達の観点)

法人を設立した際、決算期をいつにするか悩んだことはありませんか?
設立のタイミングをそのまま決算期にすることがほとんどでしょう。

創業期には、決算期の影響はそこまで大きくありません。
事業の成長期や安定期になると、決算期によって「経営」「税務調査」「資金調達」に影響します。

そのため、決算期は戦略的に考えて決定(変更)すべきと考えています。

今回のブログでは、おすすめの決算期をさまざまな角度から解説します。

これから法人設立をされる方、特に何も考えずに決算期を決めた方は、このブログを読んで決算期を決定(変更)することをおすすめします。

目次

経営を考えると「売上が最大となる月(見込)の前月」がおすすめ

売上に変動がある場合は、いつを決算にするかで経営に大きな影響を与えます。

結論として、決算期は売上が最大となる月(見込)の前月がおすすめです。
なぜなら、売上のピークを期首にすることで、決算に向けた対策に時間をかけられるだけでなく、資金繰りの確保にもつなげられるからです。

売上のピークが期末だと、決算に向けた節税などの対策や納税資金の確保ができないおそれがあります。
つまり、売上のピークを期首にすることが、経営の安定化につながると言えます。

決算期の決定の際には、繁忙期を避けることも併せて考えておきましょう。
事業の成長期や安定期になると、決算に関わる人数も増えるため、決算の作業にかなりの時間と労力が発生するからです。

税務調査を考えると「6月〜1月」がおすすめ

結論として、6月〜1月を決算期にすることをおすすめします。
理由は、税務調査の確率が低く、調査の力の入れ具合が弱いからです。

税務調査の確率が低い理由

まず、決算月と税務調査の時期の関係を理解することが重要です。

2月〜5月決算法人は7月〜12月(上期の税務調査)
6月〜1月決算法人は1月〜6月(下期の税務調査)

税務調査は、決算申告期限の3ヶ月目以降から半年以内に行われる傾向があります。
理由は、調査中に新たな申告(時期)を迎えると、調査対象期間やその他期間の計算が煩雑になるからです。

この傾向から外れる税務調査については、税務署が何か資料を持っているか、高確率で誤りが想定されるなどの理由があります。

次に、調査官1人あたりの上期の税務調査と下期の税務調査の件数を確認しましょう。

7月〜12月(上期の税務調査) 約20件
1月〜6月(下期の税務調査) 約10件

目安と言われる件数ですが、上期と下期で件数に2倍の差があります。
この差だけみても、下期は税務調査の確率が少ないことがわかります。

私が法人課税部門で税務調査をしていたときには、上司(統括官)が上期22件・下期8件の指示があった年もありました。
調査件数のみノルマがあるため、統括官と調査官たちは「上期に件数を稼いでおきたい」という狙いがあります。

また、下期の件数が少ない理由については、2月~3月には確定申告があるからです。
さらには、7月10日には定期の人事異動があるため、5月下旬以降に行う調査が少なくなることも要因です。

力の入れ具合が弱めな理由

6月〜1月決算法人(下期の税務調査)について、力の入れ具合が弱めな理由は、調査官の人事評価の影響があるからです。

上期の税務調査は特に人事評価に影響します。

これは国家公務員の人事評価期間と、国税組織の年度(事務年度7月~6月)のズレが要因です。
細かい説明は省略しますが、上期の調査は評価されやすく、下期の調査は評価されにくい仕組みです。

税務調査の結果は、調査官の賞与に影響を与えるため、上期の調査に力が入るのも当然です。

その他、前述した「7月10日には定期の人事異動がある」ことも、下期の調査に力が入れづらい理由です。
不正事案などを除いて、原則として、事務年度(6月末)までに調査を終了させないといけません。

そのため、上期の調査であれば時間をかける事項であっても、下期においては早期の調査終了が優先されることも多いです。

資金調達を考えると「11月と5月」がおすすめ

融資を受けやすい時期があり、それを考慮すると決算期は11月と5月がおすすめです。

資金繰り悪化などでない限り、決算書ができたタイミングで融資を申し込むことが多いです。
つまり、決算月から3ヶ月目の月に金融機関に決算書や申告書を提出するケースがほとんどでしょう。

11月決算であれば2月に提出、5月決算であれば8月に提出。
2月に提出するものは、銀行の1年間の成績(3月決算)の成績に関わるため、融資を受けやすくなります。
8月に提出するものは、銀行の半期の成績に関わるため、こちらも融資を受けやすくなります。

銀行の目標の数値には「融資額」があるため、銀行の決算月である3月や半期のタイミングである9月は、融資に積極的になります。
融資額の目標に届いていない場合は、特に積極的な融資が期待できます。

その他、9月決算もおすすめです。
12月に決算書を提出することとなりますが、12月は年末年始の仕入れや賞与支払いなどの理由で、融資の申し込み件数が多い時期です。

さらに12月は多忙な時期です。
1件ごとに審査する余裕がなくなり、審査がとおりやすい時期と言えます。

まとめ

おすすめの決算期のまとめは次のとおりです。

経営を考えると「売上が最大となる月(見込)の前月
税務調査を考えると「6月〜1月」
資金調達を考えると「11月と5月」

3つの観点のうち2つ以上を考慮して、決算期を決定(変更)することをおすすめします。

決算期を変更する場合は、「株主総会の開催」「定款の変更」「税務署などへの異動届」が必要なことにはご留意ください。

最後に、いしい税理士・行政書士事務所では、元国税調査官の税理士が税務調査が来なくなる書面添付の作成のほか、中小企業診断士資格を活かした財務コンサルティングなどのサービスを提供しています。

お客様の事業の継続・成長・発展に最善を尽くしますので、税務と経営の両方のサポートが必要な方は、ぜひ当事務所までお問い合わせください!


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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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