【税理士のひとりごと】国税職員が中小企業診断士になれるレアルート

こんにちは!
今日はゴールデンウィーク前半の絶好のお出かけ日和ですね。

個人的なことですが、開業して5ヶ月ほどが経ちました。
あっという間です。まばたきしたら1日が終わっているという感覚です。

開業後は、士業の方を中心に名刺交換をしてお話をすることが多いです。
その際、よく質問されることに「国税職員時代になぜ中小企業診断士資格を取得しようと思ったのか」があります。

私の場合、たまたま中小企業診断士になれる研修ルートにいけたというのが本音です。
国税職員は税理士だけでなく、運が良ければ中小企業診断士になれる可能性があります。

私は運だけはめちゃくちゃ良いので、税理士+中小企業診断士になることができました。

国税職員の幹部含め、中小企業診断士になれるルートを知っている人はごく少数です。
インターネットにもこの情報はないと思います。

今回のひとりごとでは、国税職員が中小企業診断士になれるルートを紹介します。
国税組織の人事異動のことや、国税職員時代の体験も語っています。

ひとりごとですので、ほぼ見直しなしで書きます。
その分、ツッコミどころは多いかもしれません。

興味がある方は最後までお読みください!

目次

国税職員が中小企業診断士になれるレアルート

前提と段階的な条件があります。

前提条件

前提としては、税務署の酒類指導官部門の職員になることです。
酒類指導官部門の職員は最初からなれるわけではありません。

法人課税部門の職員が異動する、異動先の1つとして酒類指導官部門があるため、定期の人事異動次第と言えます。
もちろん、異動の希望を出すことはできますが、かなうことは少ないです。

ちなみに私が酒類指導官部門に異動したときは、初めての人事異動であり、部署も勤務地も希望とまったく異なっていました。
最初の配属で、希望する法人課税部門と埼玉県南方面の勤務地がかなったため、その調整だと考えられます。

酒類指導官部門の仕事は、酒税とお酒の免許が中心です。
過去のブログで、酒類指導官部門の仕事のイメージができるものがありますので、よかったらお読みください。

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段階的な条件

段階的な条件は次のとおりです。

STEP
酒税行政研修の受講・修了する
STEP
中小企業診断士1次試験に合格
STEP
中小企業大学校の中小企業診断士養成課程研修の受講生に選抜される
STEP
中小企業診断士養成課程を受講・修了する

ステップ1「酒税行政研修の受講・修了する」

まず酒税行政研修を説明します。

この研修は、酒税行政事務を担当する職員の中から選考された20名を対象として実施しています。
研修期間は5ヶ月で、カリキュラムは次のとおりです。

国税庁ホームページ 酒税行政研修より
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenshu/syuzei.htm

半分は酒税法、半分は中小企業診断士の勉強というイメージ。

個人的に、ゼミ形式の酒税法は苦手で辛かったです。
電車で税務大学校に通っていましたが、ストレスがある電車通学と苦手な講義で朝えずくときもありました。
一方で、中小企業診断士の講義はめちゃくちゃ楽しかったと記憶しています。

リングマウスを使いこなす講師の方を真似て、リングマウスを買ったり、中小企業診断士の延長?の講義での速読が印象に残っています。

酒税行政研修修了後は、中小企業診断士1次試験を受け、上司たちに結果を報告します。
1次試験については後述します。

この研修に選抜されるのはそこまで難しくないと考えています。
自分以外に研修を受講してきた人たちをみると、目の前の仕事に最善を尽くしていれば、研修に行けるチャンスがあると言えます。

ステップ2「中小企業診断士1次試験に合格」

こちらが最大の関門と言えます。

診断士試験の1次試験は7科目あり、前述した研修内容だけでは合格できないため、1部科目だけの合格を狙うのが現実的です。

私はマークシートの神が降臨したこともあり、7科目中3科目に合格しました。
この時期は税理士試験の勉強中であり、中小企業診断士資格を取得するつもりはなかったです。

ただ、運良く3科目に合格し、残り4科目であったため、「もったいないし次の年で合格しよう」と決意しました。

独学が苦手なため、埼玉県の大宮にあるTACに通い、次の試験で無事残り4科目に合格。
講師の方たちの教え方が素晴らしく、しかも講義が面白かったため、講師の方たちに感謝です。

ステップ3「中小企業大学校の中小企業診断士養成課程研修の受講生に選抜される」

こちらも目の前の仕事に最善を尽くしていれば選抜されると思います。
診断士の1次試験に合格する人がかなり少ないということもあり、ステップ1・2がスムーズにいけば、そのままの流れで養成課程研修に行けると思います。

養成課程研修に行ければ、中小企業診断士の二次試験の結果は関係ありませんので、私は1次試験だけを受験したと記憶しています。

ステップ4「中小企業診断士養成課程を受講・修了する」

養成課程研修の前に中小企業大学校の面接があります。
落ちるような面接ではありませんので、聴かれたことに前向きに答えれば問題ないでしょう。

面接時の印象に残っている質問に「実習形式の研修では、1週間~2週間、睡眠時間を削って報告書作成などの作業があります。かなり大変になりますが、大丈夫ですか?」があります。

実際に研修を受けると、3時間睡眠が数日続くなど大変な時期がありました。
さきほどの質問は、事前にそのような大変な時期があること、それを乗り越える意志があるか確認する目的でしょう。

養成課程研修は4月から9月の期間の研修で、中小企業大学校東京校で行われました。

研修期間について、国税の職場は7月に定期の人事異動がありますが、研修期間中に定期異動を迎えるため、かなり特殊な立場になったことを覚えています。
人気のある浦和税務署に私が4年間いられたのはこの研修の影響かもしれません。

養成課程研修はものすごく濃い研修で、圧倒的な熱量でチームコンサルなどをします。
実習先への最終プレゼン後は、研修生たちと泣きながら酒を飲むなど、素敵な思い出がいっぱいあります。

濃厚な養成課程研修の詳細は別の機会に書こうと考えています。

中小企業診断士になれるルートは、国税庁酒税課の予算の関係次第です。
基本は継続されますが、今後なくなる可能性もあるかもしれません。

中小企業診断士になった後

中小企業診断士になった後の国税組織内での異動について、異動先や業務内容が変わるかというと、そこまで影響はないと考えられます。

同じルートを辿った先輩たちをみていても、診断士だからこの部署、この仕事ということはなかったです。
私を除いて先輩たちはもともと優秀であり、先輩たちの出世コースが加速化するという影響はあったかもしれません。

診断士になった後の仕事の仕方について、仕事の考え方や進め方がかなりロジカルになったことは大きな変化でした。HOWやWHYを使いつつ、レイヤーを意識するなどは診断士あるある。

パワーポイント資料や長文の資料作成などは、養成課程研修で何度もしてきたことなので、サクサクとできるようになりました。

税理士法人転職後から開業した現在でも、診断士の知識とノウハウはあらゆる場面でプラスになっています。
事業計画書の作成や顧問先の社内研修の講師などがスムーズにできたのは、診断士資格のおかげと言えます。

話は変わりますが、国税組織にお詫びしたいことがあります。
診断士取得後2~3年で国税の職場を退職したため、国税組織が私に投資してくれた分の還元が不十分だということです。

投資分の還元をしてから退職したいと考え、任意で国税庁の理念見直し資料・非常勤の方向けの業務マニュアル・国税組織のBCPについての論文などを残してきました。

それらだけでは還元は不十分だと思います。
機会があれば、税理士として租税教室やセミナー講師などの依頼があったときに還元したいと考えています。

国税職員時代を振り返ってみて

中小企業診断士になれるレアルートは、縁とタイミングもあると思います。
上司や先輩に恵まれたことは間違いありません。
目の前の仕事に最善を尽くしてきてよかったと考えています。

とは言え、個人的に酒類指導官部門の仕事はけっこう辛いところがありました。
私にとって、法人の税務調査はかなりのやりがいがありましたが、酒類指導官部門の仕事は行政の仕事が大半のため、調査ほどのやりがいを感じられなかったからです。

特にお酒の免許の仕事では、酒類指導官部門がある税務署(中心署)から、酒類指導官部門がない税務署(対象署)へ定期的に巡回して仕事します。

この仕事は、自分よりも役職が高い法人1部門統括官・上席、管理運営部門の統括官・上席、総務課長・係長、副署長、税務署長たちの協力を得なければスムーズに進みません。

常にお願いベースでの仕事と言えます。
対象署での作業は空いている席でパソコンを借りて仕事をするなど、けっこう肩身が狭いです。

対象署で仕事をしていたときに「お酒の仕事なんて、税務調査に比べればたいした仕事ではない」と言われたこともあります。

その気持ちはわからなくもないですが、「こっちはこっちで、各部署の協力を得ながら、限られた時間で仕事を終わらせないといけないんだよ!」と心の中で叫びながら、「確かに調査のプレッシャーとは比べ物にならないですよね」とニコニコしながら言っていました。

そのようなことを言う職員の部署で、席とパソコンを借りる許可を得るだけでも気をつかいます。
もちろん、税務署や対象署のお酒のサポートしてくれる担当者によっては、専用の席を用意してくれるなどの配慮もあります。

悩むことが多い仕事でしたが、ヒトは悩んだ分努力して乗り越えようとします。
対象署のお酒の業務に関わる人たちに、いかに負担をかけないか、いかに気に入ってもらえるか、いかに存在感を示せるかなど創意工夫を重ねる機会になりました。

おかげで、20代後半で管理・調整能力が見に付き、大きく成長できた気がします。

免許担当をしていたときの思い出話を語り過ぎました。

今も、行政書士の仕事で酒類指導官部門の免許担当の方にお世話になる機会も多いです。
個人的には免許担当の方にはかなり親近感があるため、担当者に余計な手間をかけないようスマートな仕事をしていきたいと思っています。

最後に、ブログを書いていて改めて、目の前の仕事に最善を尽くすことが重要であり、無駄な経験は一切ないということを感じました。

酒類指導官部門の免許担当の仕事は、酒類販売業免許専門の行政書士事務所として最高の経験と言えます。
自身の知識と経験が、お客様に超ダイレクトに活きています。

今後は仕事はもちろん、仕事以外でも最善を尽くしていきます!
今までしたことがないことを試したり、チャレンジをして経験も積んでいきます。

ここまで読んでくださった方や関わりのある方々、専門家として未熟な部分もありますが、今後とも応援よろしくお願いします!

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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