消費者にとって関心の高い「お酒の表示」について

私たち消費者にとって、食品の表示は重要な情報と言えます。
表示の内容で、購買の意思決定をすることもあるでしょう。

お酒についても表示のルールがいろいろとあります。
今回のブログでは、日ごろほとんど触れることのないお酒の表示ルールについて解説します。

目次

お酒の表示義務制度について

酒類の容器及び包装には、酒税の検査取締上の見地から、当該酒類の品目等、所定の事項を表示することが義務付けられています。また、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため、財務大臣は、酒類の製法、品質その他政令で定める事項の表示について必要な基準を定めることができることとされています。

このほか、食品表示法、米トレーサビリティ法、日本農林規格等に関する法律(JAS法)など、制度目的が異なった各種の表示ルールが適用されています。

国税庁課税部酒税課の「国税庁報告資料(令和6年10月22日)」より

お酒は酒類に関する法律「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(通称:酒類業組合法)」のほか、「食品表示法」の対象でもあり、多くの表示ルールに従う必要があります。

酒類の表示は消費者の利益のほか、酒税の検査取締の必要性からも厳しい表示のルールとなっています。

なお、「品目」とは、お酒の種類のことです。
法律上の呼び方と一般的な呼び方と違うものがあります。
例えば、日本酒は法律上は「清酒」、ワインは法律上は「果実酒」です。

ビールは缶、日本酒やワインはビンに貼っているラベルに表示事項が記載されていることが多いです。

酒類の品目ごとの表示ルールまとめ

国税庁のホームページに、品目ごとの表示ルールがまとめられています。

清酒の表示ルールのまとめ
【国税庁 酒類の表示に関する説明事項(清酒)】
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/11/pdf/012.pdf

よく聴く、純米大吟醸酒などの「特定名称酒」の表示ルールも、上記の説明事項のURLから確認できます。
日本酒に興味がある方はチェックしてみてください。

その他の品目の表示ルールのまとめ
【国税庁 酒類の表示に関する説明事項】
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/11/check.htm

表示の文字についてはフォントが決まっており、大きさのルールもあります。
アルコール分の表示の仕方も6パターンと決まっています。
特に、税率適用区分を表示することを知っている方は「お酒の専門家」と言えますね。

特定の品目は、その品目だけの表示ルールがあります。
清酒については精米歩合、加熱処理の有無、産地なども表示内容に影響するなど、特に厳しい内容となっています。

国税組織が酒類の表示が正しいか調査

税務署の酒類指導官部門を中心に、酒類の表示が正しいか調査を行っています。

「表示事項確認調査」と呼ばれる調査であり、原則として酒類製造免許業者に対して行います。
私も国税職員時代にこの調査をしてきました。
製品に問題はないものの、意図せずに表示が誤ってしまうケースがたまにあります。

また、新商品を販売する際など、新たな表示を行うときは税務署に「表示方法届出書」を提出するルールもあります。
お酒は酒税の検査取締上の見地から、昔ほどではないものの、今でも厳しいルールと言えるでしょう。

表示事項確認調査については、こちらのブログで詳しく解説しています。

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酒類の表示に関する法令等(参考)

酒類の表示に関する法令等のうち、重要な法律は以下のとおりです。
長いので読み飛ばしてOKです。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の5 酒類の品目等の表示義務

酒類製造業者又は酒類販売業者は、政令で定めるところにより、酒類の品目その他の政令で定める事項を、容易に識別することができる方法で、その製造場から移出し、若しくは保税地域(関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二十九条に規定する保税地域をいう。)から引き取る酒類(酒税法第二十八条第一項、第二十八条の三第一項又は第二十九条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)又はその販売場から搬出する酒類の容器又は包装の見やすい所に表示しなければならない

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令第8条の3 表示事項(一部抜粋)

酒類製造業者は、その製造場(酒税法第二十八条第六項又は第二十八条の三第四項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。以下この条において同じ。)から移出する酒類(同法第二十八条第一項又は第二十九条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)の容器の見やすい箇所に、当該酒類の移出の時までに、その氏名又は名称、その製造場(自己の他の製造場においてこの条の規定により表示すべき事項の全部を表示した酒類を移入し、これをそのままの表示で更に移出する場合における製造場を除く。)の所在地及び次に掲げる事項を、容易に識別することができる方法(当該酒類(財務大臣が定める見本用のものを除く。)の品目については、財務省令で定めるところにより財務大臣に届け出た方法。次項において同じ。)で表示しなければならない。
一 内容量(粉末酒にあつては、当該粉末酒の重量)
二 当該酒類の品目
三 当該酒類(粉末酒を除く。)のアルコール分
四 雑酒にあつては、税率の適用区分を表す事項
五 その他の発泡性酒類(酒税法第三条第三号ハに規定するその他の発泡性酒類をいう。)にあつては、発泡性を有する旨を表す事項

2 酒類を保税地域から引き取る酒類販売業者又は酒類を詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者は、その引き取り、又は搬出する酒類の容器の見やすい箇所に、当該酒類の引取り又は搬出の時までに、その住所及び氏名又は名称、その引取先又は詰替の場所の所在地並びに前項各号に掲げる事項を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。
3 第一項の規定は酒類製造業者がその製造場から移出する同項に規定する酒類の包装(透明なもの以外のもので通常当該酒類とともに消費者に引き渡されるもののうち、財務大臣が定めるものに限る。以下同じ。)について、前項の規定は同項に規定する酒類販売業者が保税地域から引き取り、又は詰め替えて販売場から搬出する酒類の包装について、それぞれ準用する。この場合において、第一項中「当該酒類の移出の時」とあるのは「当該酒類の移出の時(当該包装を当該酒類と別個に移出する場合には、当該包装の移出の時)」と、「方法(当該酒類(財務大臣が定める見本用のものを除く。)の品目については、財務省令で定めるところにより財務大臣に届け出た方法。次項において同じ。)で表示」とあるのは「方法で表示」と、同項第一号中「内容量」とあるのは「当該包装に係る酒類の内容量」と、前項中「当該酒類の引取り又は搬出の時」とあるのは「当該酒類の引取り又は搬出の時(当該包装を当該酒類と別個に引き取り、又は搬出する場合には、当該包装の引取り又は搬出の時)」と、「並びに前項各号」とあるのは「、当該包装に係る酒類の内容量(粉末酒にあつては、当該粉末酒の重量)並びに前項第二号から第五号まで」と読み替えるものとする。
4 前三項の規定による酒類の品目の表示は、当該品目の名称以外に一般に慣熟した呼称があるものとして財務省令で定める酒類については、当該酒類の品目の名称に代えて財務省令で定める呼称によることができるものとする。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の6 酒類の表示の基準

財務大臣は、前条に規定するもののほか、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため酒類の表示の適正化を図る必要があると認めるときは、酒類の製法、品質その他の政令で定める事項の表示につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を定めることができる
2 財務大臣は、前項の規定により酒類の表示の基準を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。
3 財務大臣は、第一項の規定により定められた酒類の表示の基準を遵守しない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その者に対し、その基準を遵守すべき旨の指示をすることができる
4 財務大臣は、前項の指示に従わない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その旨を公表することができる

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令 第8条の4 表示の基準

 法第八十六条の六第一項に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 酒類の製法、品質その他これらに類する事項
二 酒類の特性と地理的な産地との関係に関する事項
三 二十歳未満の者の飲酒防止に関する事項
四 酒類の消費と健康との関係に関する事項

食品表示法について

食品表示法の対象には酒類はもちろん、食品添加物も含みます。

食品表示法の目的は「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保すること」です。

平成25年に、従来あった食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して創設されました。
食品の表示は消費者庁が管轄しています。

食品表示法の概要は、消費者庁のホームページにあります。
【消費者庁ホームページ 食品表示法 概要】
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/130621_gaiyo.pdf

まとめ

日ごろほとんど触れることのないお酒の表示ルールを解説しました。
お酒については、酒類に関する法律のほか、食品表示法など多くのルールに基づき表示されています。

ブログを読んでくださった方は、これから日本酒などを飲むときに、ぜひラベルの表示を確認してみてください。
お酒や表示に興味を持つきっかけになるかもしれません。

このブログを書いていて、私も再認識したことがあります。
食品表示基準に基づき、酒類にもアスパルテーム(砂糖よりも約200倍の甘味を持つ人工甘味料)を含む場合は「L-フェニルアラニン化合物を含む」旨の表示をしなければならないということです。

世界保健機関(WHO)によると、アスパルテームは発がん性がある可能性があるとしています。
低カロリーやノンカロリーのお酒にアスパルテームが含まれていることがあるようです。
過剰摂取しないよう、私も表示にもっと興味を持ちます。

今後もお酒に関する情報を発信しますので、定期的にブログをチェックしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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