酒類販売業免許取得後に行われる税務署の調査【①酒類の販売管理調査】

みなさん、こんにちは!

あまり知られていませんが、酒類販売業免許取得後に税務署の調査が行われることがあります。

・税務署は酒類販売業者に対して酒類行政に係る各種調査を実施
・税務署と国税局は、酒類製造業者に対して酒税調査などを実施

免許取得と同時にいろいろな義務が課せられるのはもちろん、その義務の遵守状況を確認するための調査が行われています。

酒類販売業免許取得に係る申請手続きの情報は多くありますが、免許取得後の情報はほとんどありません。
特に調査については、国税庁の形式的な情報しかありません。

今回は酒類販売業免許取得後に行われる調査のうち、最も多く行われる「酒類の販売管理調査」について解説します。

調査の際は税務署からどのような連絡があるのか?当日の調査ではどのようなことを確認されるか?
そんな疑問をすべて解決する内容です。

私は税務署と国税局で上記の調査を一通り行いました。
免許の審査とお酒の調査をしていた行政書士はほとんどいません。

守秘義務に反しない範囲で、私が調査していたときのことも説明しています。
今回の解説内容はインターネットにはない情報ですので、免許業者の方はぜひ参考にしてください!

目次

免許取得後に行われる調査一覧

免許取得後に行われる調査は、次の図表のとおりです。

調査の名称調査の内容調査対象(原則)
①酒類の販売管理調査小売販売場へ臨場し、20歳未満の者の飲酒防止に関する表示の遵守状況等を確認する調査酒類小売業免許業者
②酒類の取引状況等実態調査酒類の公正な取引環境を整備するための調査。主に正当な理由なく「原価+経費≧売価」となっていないか調査酒類小売業免許業者
酒類卸売業免許業者
酒類製造免許業者
③表示事項確認調査酒類の容器・包装の表示が法令で定められている表示義務事項や表示基準に基づくか調査酒類製造免許業者
④酒税調査酒税を納める酒類の製造者等の申告内容が正しいか調査酒類製造免許業者

関係する法律について、上記の①~③は「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(通称、酒類業組合法)」。
④が「酒税法」です。

酒類業組合法については、第1条で「酒税の確保及び酒類の取引の安定を図ることを目的とする。」と定められています。
その目的を達成するために上記①~③の調査が行われるわけです。

今回のブログは①酒類の販売管理調査を深堀り解説します。

酒類の販売管理調査について

酒類の販売管理調査は、次のとおり、酒類小売業免許のうち「一般酒類小売業免許」取得者に対して行われます。

※図表は一般酒類小売業免許申請の手引より引用

酒類の販売管理調査は早ければ15分程度で終わり、事前にお酒コーナーの表示を再確認しておく程度で、すべきことをしていれば調査の対策や準備などは不要です。

その理由は後述します。

調査は税務署の酒類指導官部門が行います。
酒類指導官部門について詳しく説明します。

酒類指導官部門について

税務署の酒類指導官部門は一部の税務署にしかありません。

酒類指導官部門がある税務署が、他の税務署の酒税とお酒の免許に関する質問や相談にも対応しています。

酒類指導官部門の免許担当が、特定の曜日に他の税務署を巡回し、お酒関係の仕事を行っています。
調査検査担当が複数の税務署をまたいで、酒税や酒類行政に係る調査を行っています。

酒類指導官部門設置署と、酒類指導官部門がどの税務署を担当するかは、国税庁ホームページに掲載されています。

【国税庁ホームページ:酒税とお酒の免許に関するご質問やご相談等について(大阪国税局管内)】https://www.nta.go.jp/about/organization/osaka/sake/info/info.htm

酒類指導官部門は複数の税務署の仕事を行っていることを知っておくとよいでしょう。
知っていれば、免許場所の管轄と異なる税務署から連絡があっても慌てることがなくなります。

質問検査権

調査は酒類業組合法91条の質問検査権に基づいて行われます。

第九十一条 財務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、酒類業組合等、酒類製造業者若しくは酒類販売業者若しくはこれらの者とその事業に関して関係のある事業者に対し、その業務若しくは財産に関し必要な報告を求め、又は当該職員をして、これらの者に対し質問し、若しくはその事務所若しくは事業所に立ち入り、業務若しくは財産の状況、帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)、設備、原材料若しくは酒類の検査をさせることができる
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

調査の連絡

酒類の販売管理調査があるときは、事前に電話連絡があります。

法人税や所得税などの税務調査と同じように、調査の目的・調査日時・調査官の氏名などを伝えることとなっています(国税通則法に準じて事前通知)。

連絡は税務署の酒類指導官部門の調査検査担当の職員が行います。

次のような連絡内容です。

①「〇〇税務署、酒類指導官部門の〇〇です。いつもお世話になっております。店長はいらっしゃいますか?」
②「突然ですみませんが、〇〇店(販売場名称)のお酒の陳列場所の表示の確認など、酒類の販売管理についての確認調査を予定しています。所要時間はスムーズにいけば15分から20分程度です。」
③「〇月〇日の11時ごろにお店にてご対応いただくことは可能でしょうか。当日は酒類販売管理者の方かそれに代わる責任者の方にご対応いただきたいです。」
④「調査当日までにお酒の陳列場所の表示が正しく行われているか、見直してもらえるとありがたいです。」
⑤「では当日の11時ごろ、〇〇様あてに、〇〇税務署、酒類指導官部門の〇〇が伺います。念のため、こちらの連絡先をお伝えします。電話番号は~」

私が調査の連絡をするときには、このような連絡をしていました。
ほとんどの場合、相手方は突然の連絡で驚かれます。

②については、調査のハードルを低く感じてもらうため、所要時間が短時間であることを伝え、こちらの希望の日時に対応してもらえるように話をします。

③については、原則として、当日の調査の対応は責任ある立場の人が行います。
チェーン店でない場合は経営者、チェーン店の場合は店長や副店長など店舗の責任ある立場の方(酒類販売管理者であることも多い)です。

私が調査していたとき、店長や副店長が不在のときは、お酒の販売を担当する方(お酒の部門)の立会いをお願いしていました。

酒類の販売管理調査は1日に5件程度行うことが多いため、件数をこなす必要があります。
調査の立会者と調査日時については、臨機応変に対応して調査を行います。

④については、私は必要に応じて伝えていました。
調査で問題があると、その後改善されたか再度確認しないといけないため、その手間を省くために伝えていました。
お酒関係の調査は税務調査と異なり、基本的に問題がないことが望ましいという考え方が特徴的です。

⑤については、突然の連絡で驚かれ不安になる方が多いため、最後に再確認の意味で調査の日時、調査担当者の氏名・連絡先を伝えます。

調査の日時が指定されることが多いですが、都合が悪くなった場合は、日時の変更が可能です。

都心部以外では、調査官が車で伺うことが多く、調査の事前連絡の際に、お店の駐車場の有無と利用についても確認されます。
私も車に乗って、高速道路を使いながら、関東のとある県の端から端まで調査をしていました。

当日の調査で行われること

当日の調査で行われることは次のとおりです。

①二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準が遵守されているか確認
②酒類販売管理者の選任や酒類販売管理者標識が適正か確認
③その他酒類小売業に対する社会的要請に関する事項の確認

二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準が遵守されているか確認

二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示は、酒類の陳列場所(お酒コーナー)における表示が適正に行われているか確認されます。
お酒コーナーに次のような表示がされていればOKです。

100ポイント以上の大きさなどのルールはありますが、基本的にお客様からよく見えるように表示していれば問題にはなりません。

お酒の横にノンアルコール商品やジュースなど清涼飲料水がある場合は、「明確に区分」するための表示も必要です。
次のような表示がされていればOKです。

横の区分の表示ではなく、縦の区分の表示でもOKです。

上記の2つの表示は国税庁のサンプルです。

次のURLからダウンロードができます。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/miseinen/sampuru/01.htm

催事や期間限定の売場を設置したときは、上記の表示がもれやすいです。
表示がもれていた場合は、その場で表示を改善するよう指導されることがほとんどです。

私は上記のサンプルを持ち歩いていたので、チェーン店などでなければ、このサンプルをその場で表示してもらって改善完了としていました。

その他詳しい表示については、国税庁の「お酒の適正な販売管理に向けて」(パンフレット)の5ページから10ページに書いてあります。

【国税庁「お酒の適正な販売管理に向けて」】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sake/hambaikanri/00.pdf

このパンフレットも、私が調査するときには常に持ち歩いていました。
表示の具体例が図示されていますので、わかりやすくて使い勝手のよいパンフレットです。

酒類販売管理者の選任や酒類販売管理者標識が適正か確認

まずは、酒類販売管理者標識が掲示されているか確認されることが多いです。

酒類販売管理者標識は「公衆の見やすい場所」に掲示しなければなりません。
「公衆の見やすい場所」とはお酒コーナーか、レジのよく見える場所などでOKです。

酒類販売管理者標識は次のとおりです。

標識に記載する内容は、酒類販売管理研修の「受講証」に記載されている内容です。

酒類販売管理標識は、次のURLの「標識の掲示」の項目にてExcelとPDFのダウンロードが可能です。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hambai/mokuji.htm

次に、酒類販売管理者の選任が適正か確認します。

たまに、酒類販売管理者が異動したにももかかわらず、異動した人が酒類販売管理者となっていることがあります。
そのような場合は「酒類販売管理者選任(解任)届出書」の提出を指導されます。

酒類販売管理者の研修の受講期限も確認される場合があります。
期限が過ぎている場合は、早急に研修を再受講するよう指導されます。

他にも、酒類販売管理者が不在などの場合には、管理者に代わる責任者を指名・配置しているか確認される場合があります。
責任者の指名・配置の詳細は次のとおりです。

酒類の適正な販売管理の実効性を確保する観点から、次の⑴~⑺に掲げる場合には、酒類の販売業務に従事する者の中から酒類販売管理者に代わる者を責任者として必要な人数を指名し、配置してください。
なお、責任者はできるだけ成年者とし、特に夜間(午後 11 時から翌日午前5時)においては成年者を配置してください。
(1) 夜間(午後 11 時から翌日午前5時)において、酒類の販売を行う場合
(2) 酒類販売管理者が常態として、その選任された販売場に長時間(2~3時間以上)不在となることがある場合
(3) 酒類売場の面積が著しく大きい場合(100 平方メートルを超えるごとに、1名以上の責任者を指名)
(4) 同一建物内において酒類売場を設置している階が複数ある場合(酒類販売管理者のいない各階ごとに、1名以上の責任者を指名)
(5) 同一の階にある複数の酒類売場が著しく離れている場合(20 メートル以上離れている場合)
(6) 複数の酒類売場が著しく離れていない場合であっても、同一の階において酒類売場の点在が著しい場合(3か所以上ある場合)
(7) その他酒類販売管理者のみでは酒類の適正な販売管理の確保が困難と認められる場合

「一般小売業免許申請の手引」より引用

責任者の指名・配置状況はヒアリングで確認します。

調査官から指導があった際は、早急に改善しなければなりません。
私は今後の酒類販売管理のために、改善次第、速やかに連絡するよう指導していました。

その他酒類小売業に対する社会的要請に関する事項の確認

その他酒類小売業に対する社会的要請に関する事項の確認も行われます。

確認内容は次のとおりです。

・二十歳未満と思われる購入者に年齢確認をどのように行っているか確認
・容器のリサイクルの取組状況の確認
・適正飲酒の啓発状況の確認(店内放送・ポスターの掲示など)


上記はヒアリングで確認します。
年齢確認以外は取組などをしていなくても問題ありません。

調査の報告書類に、容器のリサイクルなどを「している」「していない」というチェックがあるため、ヒアリングで簡単に確認する程度です。

その他、安売り商品の値段の確認がされることもあります。

「免許取得後に行われる調査一覧」のところで、主に正当な理由なく「原価+経費≧売価」となっていないか調査する「酒類の取引状況等実態調査」の関連で情報を集めるため、売価を確認することがあります。

この確認は、調査開始前に調査官がお店で売価を確認したり、調査の最後に「お酒の売価をメモしてから帰ります」と伝えて確認することもあります。

まとめ

一般酒類小売業免許取得者に対して行われる「酒類の販売管理調査」を解説しました。

酒類の販売管理調査は早ければ15分程度で終わり、事前にお酒コーナーの表示を再確認しておく程度で、すべきことをしていれば調査の対策や準備などは不要です。

この解説を読んでもらえたら、突然の税務署からの連絡に慌てることもありません。
調査当日に確認される内容も説明していますので、小売業免許をお持ちの方はこのブログをブックマークしてもよいかもしれません。

今回の解説は内容が濃すぎるため、国税組織がこのブログを見つけたときに何か言われるか少し不安です。
調査する側と調査を受ける側の双方において、調査が円滑に進むメリットがあると考えたため、情報発信することにしました。

最後に、いしい税理士・行政書士事務所では、元酒類指導官部門の免許担当の行政書士が免許申請を行っていますので、最短・確実な免許取得ができます。

お酒の販売をしたい方はぜひお問い合わせください!
免許取得後の質問や相談にも対応します!

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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