借入金の返済原資とは?計算式・債務償還年数・1年以内返済額のチェック方法を解説

借入金の返済原資とは、借入金を返済するための資金の源泉のことで、「税引後当期純利益+減価償却費」で計算します。 売上や税引前利益ではない点に注意が必要です。
返済原資が何かを知らないまま借入を続けると、利益が出ているのに返済ができなくなる「黒字倒産」に陥るおそれがあります。
今回のブログでは、借入金の返済原資の計算式と、毎期必ず確認すべき「1年以内の返済額」とのチェック方法について、中小企業診断士でもある税理士の視点で、数字が苦手な方にもわかるように図解で解説します。
「売上」「利益」「返済原資」は何が違う?

「借入金は何から返すのですか?」とお聞きすると、「売上から」「利益から」というお答えが多いです。どちらも間違いとまでは言えませんが、返済の本当の原資は別にあります。
売上から税引後利益までに至る過程での各種利益と返済原資の位置づけを整理しておきましょう。
| 項目 | 何を表すか | 返済原資との関係 |
|---|---|---|
| 売上 | 商品やサービスで稼いだ総額 | 仕入・経費・税金を払う前の金額。返済原資ではない |
| 営業利益 | 売上から売上原価・販管費を引いた、本業(営業活動)で稼いだ利益 | 本業の「稼ぐ力」を示す出発点。ただし利息・税金を払う前なので、まだ返済原資ではない |
| 経常利益 | 営業利益に受取利息・支払利息などの営業外損益を加減した、通常の事業活動全体の利益 | 支払利息(借入コスト)を反映した利益。金融機関が返済力をみる際に特に重視する |
| 税引前利益 | 売上から経費を引いた利益 | 税金を払う前なので、まだ返済原資ではない |
| 税引後当期純利益 | 税金を払った後に手元に残る利益 | 返済原資のベースとなる |
| 返済原資 | 税引後当期純利益+減価償却費 | 実際に借入を返せる力。金融機関も常に確認 |
ポイントは、返済原資には「減価償却費」を足すということです。理由は後ほど図解で説明します。
借入金の返済原資の計算式【税引後利益+減価償却費】
借入金の返済原資は、次のとおり計算ができます。
返済原資=税引後当期純利益+減価償却費
返済原資の1つが「税引後当期純利益」です。決算書(損益計算書)の一番下に表示される利益です。

借入金の返済原資は「利益」と回答される方も多く、ほぼ正解ではありますが、もう1つ返済原資があります。それは「減価償却費」です。
減価償却費とは、建物・車両・機械設備などの固定資産を購入したときに、一度で経費計上せず、何年にもわたり少しずつ資産価値を減少させる費用のことです。
固定資産を購入したときに現金の支出があり、減価償却費は現金の支出がない費用となるため、返済原資に減価償却費を加える必要があります。
金融機関もこの返済原資の金額を確認しています。
決算書と「返済原資」の見える化
決算書と「返済原資」を見える化したものは、下の図表のとおりです。

左の色のついた大きな箱が、決算書の売上から税引前当期利益までを見える化したものです。決算書の上から下に表示されているものを、箱の左上から右下に置き換えています。
大きな箱の右下部分の「税引前当期利益200」と「税引後当期利益130」の関係は、次のとおりの計算式です。
税引前当期利益200=法人税等70+税引後当期純利益130
税引後当期利益130=税引前当期利益200-法人税等70
返済原資となる利益は、税金をマイナスした後の「税引後利益130」です。そして、この「税引後利益130」に、その他経費中の「減価償却費100」を加えたものが返済原資です(130+100=230(図表の赤枠部分))。
この図表は後でまた登場しますので、返済原資の部分のイメージができていればOKです。
返済原資が「1年以内の返済額」を上回っているかチェックする方法

返済原資が「1年以内の返済額」を上回っているか、毎期必ず確認すべきです。改めて、返済原資の計算式は次のとおりです。
返済原資=税引後当期純利益+減価償却費
返済原資と「1年以内の返済額」
返済原資と「1年以内の返済額」を見える化したものは、次の図表のとおりです。

さきほど登場した図表の一番右側に、「1年以内の返済300」の箱が追加されています。
図表の赤枠の大きさからわかるとおり、「返済原資230」が「1年以内の返済額300」を下回っています。返済原資が70足りないため、不足分を現預金から取り崩すなどして返済することになります。
このような状態が毎年続いた場合、いずれ現預金が底をつきます。そうなると、資産を売却して現金化したり、場合によっては返済猶予の申出をしないといけなくなります。
利益が出ているから安心と考えていると、後々慌てることになりますのでご注意ください。
また、借入本数が多くなると、1年以内の返済額が年によって変わることにも注意が必要です。据置期間がある場合や、一定期間のみ低利率の条件の借入などがあると、毎年の返済額が変わります。
そのため、決算ごとに返済原資が「1年以内の返済額」を上回っているか確認すべきです。経費削減や早期の融資申込など、改善の手を打てるからです。資金繰りに余裕を持たせる手段としては、返済を「資本」とみなしてもらえる資本性借入金の活用も選択肢になります。
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返済原資は「お金(キャッシュフロー)」で考えるのが本質

借入金の返済原資は「お金」と考えることもできます。決算書では「現預金」として表示されます。お金を借りて返すのも「お金」です。
決算書には貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)があります。お金を借りて返すのは、B/S科目に影響することであり、P/L科目には関係ありません。支払利息はP/L科目ですが、返済額に比べると小さいのでいったん無視します。
前述した形式的な返済原資の計算式は、P/L科目で計算するため、返済原資にならないという考え方もあります。例えば、有価証券や固定資産を買ったり保険に多く加入することで、多額の利益が出ていても返済原資がない場合があるからです。
このような場合、手間はかかりますが「キャッシュフロー計算書」を作成すれば、「お金」の動きがわかり、返済原資が正確に計算できます。
キャッシュフロー計算書とは、会社の現金の増減を記録した書類です。営業活動、投資活動、財務活動それぞれで現金の出入りがわかります。
中小企業にはキャッシュフロー計算書の作成義務がないため、あまり目にすることはないかもしれません。資金繰りの状況を把握したり、事業計画を策定するときに、税理士や中小企業診断士が作成することが多いです。
お金の使い方が計画的かつ堅実であれば、強いてキャッシュフロー計算書を作成する必要がないこともあります。ですが、財務を詳細に把握・分析するためには必須となる書類です。
金融機関が見ている「債務償還年数」もあわせてチェック

返済原資とセットで、金融機関が必ず確認する指標があります。それが「債務償還年数」です。
債務償還年数=借入金残高÷返済原資(税引後当期純利益+減価償却費)
「今の返済原資で、借入金をあと何年で返し切れるか」を示す指標です。年数が短いほど、返済余力が大きく財務が健全と判断されます。目安は次のとおりです。
| 債務償還年数 | 金融機関の見方 | 経営者が取るべき対応 |
|---|---|---|
| 〜10年 | 健全。借入と返済力のバランスが取れている | 現状を維持。追加融資の交渉もしやすい |
| 10年〜20年 | 要注意。借入がやや重い | 利益改善・経費削減で返済原資を増やす |
| 20年〜 | 危険水域。身の丈を超えた借入 | 早期に専門家へ相談。条件変更も検討 |
例えば、借入金残高が3,000万円、返済原資が230万円の場合、債務償還年数は約13年です。10年を超えているため、金融機関からは「借入が身の丈に合っていない」と判断され、追加融資のハードルが上がる可能性も。
逆に、債務償還年数が10年以内に収まっていれば、金融機関との交渉もスムーズに進みやすくなります。新たに創業融資を検討する場合も、この指標を意識した事業計画づくりが審査通過のポイントです。
返済原資の確認とあわせて、決算のたびに債務償還年数も計算してみてください。
よくある質問(FAQ)

Q. 返済原資は「利益」と同じですか?
A. ほぼ正解ですが、正確には違います。利益(税引後当期純利益)に減価償却費を加えたものが返済原資です。減価償却費は経費でありながら現金が出ていかないため、返済原資として足し戻します。
Q. 債務償還年数の目安は何年ですか?
A. 一般的に10年以内が健全の目安とされています。20年を超えると借入が身の丈を超えていると判断され、追加融資が難しくなる傾向があります。
Q. 利益が出ているのに、なぜお金が足りなくなるのですか?
A. 返済(元本)はP/L(損益計算書)に表れないB/S取引のためです。利益が出ていても、返済原資を超える借入返済や、設備投資・保険加入などで現金が流出していると、黒字でも資金繰りが苦しくなります。
Q. キャッシュフロー計算書は中小企業でも作るべきですか?
A. 作成義務はありませんが、有価証券・固定資産の購入や投資を行っている場合は作成をおすすめします。P/Lの簡易計算では見えない「お金の本当の動き」がわかり、返済原資を正確に把握できます。
まとめ

「黒字なのに資金繰りが苦しい」この相談の多くは、返済原資を把握できていないことが原因です。
決算書の売上や利益だけを見ていると、「毎年どれだけ返済できる力があるのか」「今の借入額が本当に身の丈に合っているのか」といった重要な判断を誤ってしまいます。
本来、返済原資(税引後当期純利益+減価償却費)と1年以内の返済額・債務償還年数を毎期チェックするだけで、防げるリスクも少なくありません。「稼ぐ」だけでなく「コストを下げて返済力を高める」視点も大切です。
次のような場合は、特に返済原資の把握が必要です。
- 借入本数が多い
- 据置期間が終わる予定がある
- 設備投資が増えている
このブログを読まれた方は、ぜひ毎期返済原資を賄えているかチェックしてください。
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