【意外と知らない】借入金の返済原資はどこから?

経営者の方に「借入金の返済原資は何ですか?」と質問することがあります。

「売上です」と間違った回答が意外と多いです。

借入金の返済原資が何か知らないと、借入金の返済ができなくなるおそれがあります。

今回のブログでは借入金の返済原資について解説します。

目次

借入金の返済原資

借入金の返済原資は、次のとおり計算ができます。

返済原資=税引後当期純利益+減価償却費

返済原資の1つが「税引後当期純利益」です。
決算書(損益計算書)の一番下に表示される利益です。

借入金の返済原資は「利益」と回答される方も多く、ほぼ正解ではありますが、もう1つ返済原資があります。

それは「減価償却費」です。
建物・車両・機械設備などの固定資産を購入したときに、一度で経費計上せず、何年にもわたり少しずつ資産価値を減少させる費用のことです。

固定資産を購入したときに現金の支出があり、減価償却費は現金の支出がない費用となるため、返済原資に減価償却費を加える必要があります。

決算書と返済原資を見える化したものは、下の図表のとおりです。

左にある大きな箱が、決算書の売上から税引前当期利益までを見える化したものです。
決算書の上から下に表示されているものを、箱の左上から右下に置き換えています。

大きな箱の右下部分の「税引前当期利益200」と「税引後当期利益130」の関係は、次のとおりの計算式です。

税引前当期利益200=法人税等70+税引後当期純利益130
税引後当期利益130=税引前当期利益200-法人税等70

返済原資となる利益は、税金をマイナスした後の「税引後利益130」です。

そして、この「税引後利益130」に、その他経費中の「減価償却費100」を加えたものが返済原資です(図表の赤枠部分の230)。

返済原資230税引後当期純利益130+減価償却費100

この図表は後でまた登場しますので、返済原資の部分のイメージができていればOKです。

返済原資の別の考え方

借入金の返済原資は「お金」と考えることもできます。
決算書では「現預金」として表示されます。

お金を借りて返すのも「お金」です。

決算書には貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)があります。

お金を借りて返すのは、B/S科目に影響することであり、P/L科目には関係ありません。
支払利息はP/L科目ですが、返済額に比べると小さいので無視します。

前述した形式的な返済原資の計算式は、P/L科目で計算するため、返済原資にならないと考えることができます。

例えば、有価証券や固定資産を買ったり保険に多く加入することで、多額の利益が出ていても返済原資がない場合があります。

このような場合、手間はかかりますが「キャッシュフロー計算書」というものを作成すれば、「お金」の動きがわかり、返済原資が正確に計算できます。

キャッシュフロー計算書とは、会社の現金の増減を記録した書類です。
営業活動、投資活動、財務活動それぞれで現金の出入りがわかります。

中小企業にはキャッシュフロー計算書の作成義務がないため、あまり目にすることはないかもしれません。
資金繰りの状況を把握したり、事業計画を策定するときに、税理士や中小企業診断士が作成することが多いです。

お金の使い方が計画的かつ堅実であれば、強いてキャッシュフロー計算書を作成する必要はないと考えています。

1年以内の返済額との比較

返済原資が「1年以内の返済額」を上回っているか、必ず確認する必要があります。
改めて、返済原資の計算式は次のとおりです。

返済原資=税引後当期純利益+減価償却費

お金の使い方が計画的かつ堅実であれば、返済原資の状況は上記の計算式で判断して差し支えありません。

返済原資と「1年以内の返済額」を見える化したものは、次の図表のとおりです。

さきほど登場した図表の一番右側に、「1年以内の返済300」の箱が追加されています。

図表の箱の大きさからわかるとおり、「返済原資230」が「1年以内の返済額300」を下回っています。
返済原資が70足りないため、不足分を現預金から取り崩して返済することになります。

「1年以内の返済額300」と「返済原資230」が毎年続いた場合、毎年、返済原資の不足分70を現預金から取り崩すこととなります。

この状態が続くと現預金がなくなります。
そうなると、資産を売却して現金化したり、場合によっては返済猶予の申出をしないといけなくなります。
利益が出ているから安心と考えていると、後々慌てることになりますのでご注意ください。

また、借入本数が多くなると、1年以内の返済額が年によって変わることにも注意が必要です。
据置期間がある場合や、一定期間のみ低利率の条件の借入などがあると、毎年の返済額が変わります。

そのため、決算ごとに返済原資が「1年以内の返済額」を上回っているか確認すべきです。
決算ごとに確認することで、経費削減や早期に融資申込するなど、改善の手を打つことができます。

経営者の方は、決算書の売上と利益を見るだけでなく、返済原資も把握することが重要です。
そして、返済原資が「1年以内の返済額」を上回っているか確認するようにしましょう!

最後に、私たちの事務所では、数字の苦手な方にもわかりやすい説明を行っています。
財務コンサルティングサービスにて、キャッシュフロー計算書を含め、経営判断や経営分析のための書類作成を行っています。

数字が苦手な方、財務のサポートを必要とする経営者の方は、当事務所の税務顧問や財務コンサルティングサービスをご利用ください!


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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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