決算書は誰が作っても同じではない|税理士で会社の未来が変わる理由

「決算書なんて、最終的に税金の計算が合っていれば同じでしょう」そう思われる方は少なくありません。

ですが、実際には決算書や試算表は「誰が作るか」によって大きく変わります。

同じ請求書・納品書・契約書を見ていても、事業内容や取引内容を深く理解している税理士が作る決算書と、資料をAIで機械的に処理しただけの決算書とでは、数字の意味も、金融機関からの見え方も、税務調査のリスクもまったく違ってきます。

今回のブログでは、決算書が税理士(事務所)によってどう変わり、それが会社の未来にどう影響するのかを、元国税調査官・中小企業診断士の視点から解説します。

記帳代行をメインサービスとしている税理士からクレームが来るかもしれない内容ですが、とにかくリアルに書いています。税理士を探している方、税理士変更をすべきか悩んでいる方は、最後までお読みください。

目次

決算書とは|「集計」ではなく「判断」の積み重ね

決算書は、単にレシートや請求書を集めて数字を並べれば完成するものではありません。

その支出は何のために発生したのか、その売上はいつ・どの基準で計上すべきか、費用として今期に落とすのか資産に計上すべきか、取引は継続的なものか一時的なものか、そして金融機関や税務署から見て実態に即した説明ができるか。こうした一つひとつの判断の積み重ねで決算書は作られています。

つまり、決算書の品質は「入力の速さ」ではなく、作成者がどれだけ事業の実態を理解しているかで決まるということです。

AIを活用し、多数の顧問先を抱える税理士もいます。残念ながら、ひとりで顧問先を40社以上抱えて処理する税理士は、事業の実態まで考慮する余裕がありませんので、決算書や申告書の品質はイマイチになりがちです。

ちなみに、当事務所では一人当たり15社前後の顧問先を上限とし、決算書や申告書の品質とお客様とのコミュニケーションを担保しています。

決算書は税理士で変わる|金融機関の評価も変わる

決算書は、税務署に出すためだけの書類ではありません。金融機関にとっては、会社の信用力を判断するための重要資料です。

だからこそ、「税金の計算さえ合っていればよい」という発想で作られた決算書は、銀行から見れば事業の実態が見えない(評価できない)書類になってしまいます。

金融機関は次のような視点を持っています。

  • 売上や利益の推移に一貫性があるか
  • 科目の使い方が適切か
  • 在庫や原価の把握ができているか
  • 毎月の数字管理ができているか
  • 経営者自身が数字を理解しているか

実は決算書の表示の仕方には工夫できる点があります。さらに、会計処理(仕訳)の一つひとつも金融機関の評価を意識することで、決算書や試算表の見せ方は変わります。金融機関との対話の上では、これらの意識で処理することはかなり重要なポイントです。

実態を反映した決算書と、税金計算だけの決算書の違い

同じ資料からでも、作り手の姿勢で決算書はここまで変わります。

比較項目実態を反映した決算書税金計算だけの決算書
作成の考え方取引の背景・事業実態から判断資料を機械的に集計するだけ
金融機関の評価実態を説明でき、評価されやすい実態が見えず、評価しにくい
税務調査リスク論点を事前に整理し低減仕掛品もれ等で選定されやすい
月次試算表早く・正しく・経営判断に使える完成が遅く後追いになりがち
製造原価報告書適切に作成・活用欠落しがち

世の中の決算書の大半は実態を反映していない|追徴課税の現実

税務サービスの品質は「ブラックボックス化」しやすく、税務調査や融資審査の場面になって初めて差が表面化することが少なくありません。

その理由と悪影響、そして事業の実態を反映するにはどう決算書を作成すべきかを見ていきます。

税理士が作成する決算書のリアルな声

決算書は「事業の実態」を反映したものであるべきですが、実際に税理士が作成する決算書の大半は、事業の実態を反映したものになっていません。

実際に、お付き合いのある金融機関や、経営分析など企業のコンサルティングを行う中小企業診断士からも、「税理士の決算書はまったく信用できない」と言われ、ときにお叱りを受けます。

私も、他の税理士が作成した決算書はすべて疑いをもって確認。個人事業主や小規模の法人はともかく、顧問税理士と名乗る以上、「税金の計算のためだけの決算書ではいけない」と個人的には考えています。

税務調査での追徴課税の確率と追徴税額

2025年12月に公表された国税庁の税務調査の事績資料から、法人の場合、税務調査があると78%の確率で追徴税額が発生し、その平均は634万円と多額です。

法人にはほとんど顧問税理士がついています。それでもこの数値です。もちろん脱税など経営者側の問題もありますが、税理士が事業の実態と取引内容の確認を十分に行わず、決算申告書を作成している裏付けにもなっています。

元国税調査官の視点|製造原価報告書がない決算書は狙われる

税理士による品質の差が特に出やすいのが、製造業の決算書。製造業では本来、材料費・労務費・経費を整理し、製品を作るためにいくらかかったのかを把握するために、製造原価報告書が重要です。

中小企業では法的な作成義務はありません。だからといって不要という話にはなりません。製造原価報告書がなければ、何に原価がかかっているのか、どこを改善すれば利益率が上がるのか、値上げの根拠はあるのかがまったく見えません。

もし、製造業であるにもかかわらず、毎年の決算書に製造原価報告書がない場合、その決算書は「会社の実態を表している書類」ではなく、単なる「税金計算のためだけの書類」になっています。

もはや税金計算用でもありません。私の調査官時代の実体験ですが、製造原価報告書がない決算書は税務調査先として優先的に選定し、調査時には「仕掛品計上もれ」で追徴課税していました。

税務署は「仕掛品がない製造業はありえない」と考えています。過去の私のように、製造原価報告書がないことをもって、調査先に選ぶ調査官たちがいますので、注意してください。

仕掛品の論点を含めた製造原価報告書と税務調査については、次のブログで詳しく解説しています。

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記帳の丸投げが危険な3つの理由|自計化のすすめ

創業間もない頃は、本業で手一杯です。記帳(会計ソフトへの入力)や経理を税理士事務所に任せたいという気持ちはよくわかります。ただし、丸投げが長く続くことには大きなリスクがあります。

①数字が見えるのが遅くなる

丸投げ型では、税理士事務所側の処理が終わるまで試算表が出てきません。繁忙期や担当者の状況によっては、数字が出るまで何週間、場合によっては何ヶ月もかかることがあります。

しかし、経営判断に必要なのは「半年前の数字」ではなく今の数字です。

本当に良い月次試算表は、「作ること」そのものではなく、早く、正しく、経営判断に使えることに価値があります。適切なタイミングで税理士と数字の話ができることが、強い経営につながります。

②現場を知らないまま「推測処理」が起こりやすい

丸投げの怖さは、経営者が見えないところで処理が進むことです。担当者が事業の流れを十分理解していなければ、領収書や請求書の断片的な情報から「たぶんこうだろう」と推測して処理するしかありません。

実際に、税理士変更されたお客様の決算書から判明した推測処理には、次のようなものがありました。

よくある推測処理決算書・税務への影響
取引先名だけで勘定科目を判断経費区分が実態とズレ、経営分析にも使えない
売掛金の残高が過大(売上の過大計上)利益が過大に見え、余計な税負担につながる
固定資産の計上もれ(経費の過大計上)減価償却の誤り、税務調査での指摘対象に
外注費か給与かの判断誤り源泉徴収もれ・消費税の仕入税額控除に影響
消費税の課否判定誤り(インボイス含む)納税額の誤り、修正申告・追徴のリスク

こうした判断を誤れば、決算書の見え方も、利益の出方も、税務リスクも変わります。

そして怖いのは、その誤りが普段は見えにくいことです。決算書の品質は平時には気づきにくく、税務調査や資金調達のタイミングで初めて明らかとなります。そのため「税理士に任せているから安心」という誤解を生みやすいのです。

③自計化が進んでいる会社ほど、決算書の質は上がりやすい

「自計化」というと、「社長や経理担当者が全部入力しなければいけないのか」「手間が増えるだけではないか」と思われることがあります。本質はそこではありません。自計化の目的は、会社や経営者自身が自社の数字を理解できる状態をつくることです。

日々の入力を会社や事業主側で行うことで、次のメリットがあります。

  • 現場の実態が数字に反映されやすくなる
  • 不明点をその場で確認できる
  • 税理士側はチェックや専門判断に集中できる
  • 試算表の完成スピードが上がる
  • 決算直前に慌てることが減る

そのため、私たちは自計化の指導に注力しています。

税理士は単なる記帳代行(作業)ではなく、自計化を支援し、チェックと修正、専門判断に時間を使うことがあるべき姿と考えています。そうして、お客様の経営をサポートするのが、私のやりがいとなっています。

「誰が・どう作るか」がさらに重要になる|KSK2時代の決算書

今後は、これまで以上に「なんとなくの申告」が通用しない時代になります。

国税組織では2026年9月から「KSK2」が導入され、金融機関の審査においても、AI活用などで以前より分析の精度が上がっています。曖昧な処理や整合性の乏しい数字は、今後ますます見抜かれやすくなります。

繰り返しになりますが、事業内容を理解し、取引の背景を確認したうえで、月次で数字を整理し、必要な説明資料まで含めて整える。税務と経営の両面から支える姿勢が、決算書を作成する税理士に求められます。

私は毎月AIに数万円課金し、毎日AIを利用していますが、現時点ではAIが事業の実態を反映した適切な会計処理や決算書の作成はできないと考えています。税金の計算のためだけの処理が限界であり、税務調査の視点と金融機関の評価の視点がないからです。前提が企業ごとで変わり、複合的な経験とノウハウはネットにはないということもあります。

セキュリティ対策をした上で、顧問先のあらゆる情報を取り込み、取引の内容を都度AIに学習させながら利用すれば、いずれはAIが事業の実態を反映した決算書を作ってくれるかもしれません。それはそれで楽しみです。

AIが関係する「KSK2」の導入は、企業はもちろん税理士にとっても影響が大きいため、次のブログもあわせてご覧ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1.決算書は税理士が違うと本当に変わるのですか?

180度変わります。決算書は資料の「集計」ではなく、勘定科目の選び方や計上時期、資産か経費かなどの「判断」の積み重ねだからです。同じ資料でも、事業の実態を理解して作るかどうかで、金融機関の評価も税務調査リスクも変わってきます。事業の実態を反映していないと、誤った経営判断や経営分析につながることにも注意したいところです。

Q2.今の決算書の品質が良いか悪いか、自分で見分けられますか?

平時には見分けにくいのが実情です。品質の差は、税務調査や融資審査の場面で初めて表面化します。製造業なのに製造原価報告書がない、月次試算表がなかなか出てこない、といった点は一つの目安。自計化を重視している(記帳代行が前提でない)税理士に相談し、決算書をチェックしてもらうと、決算書の品質の判定をしてもらえるでしょう。

Q3.記帳をすべて丸投げしてはいけないのですか?

丸投げそのものを否定するわけではありませんが、長く続くと「数字が見えるのが遅くなる」「なんとなくの推測処理が起こる」といったリスクが高まります。当事務所では、経営者自身が数字を理解できるよう自計化の支援を重視しています。

Q4.税理士を変更したいのですが、今の税理士への連絡が気まずいです。

医者を変えるように税理士を早めに変えるべき場合がありますので、気まずさよりも経営判断として変更を進めるべきです。税理士変更の場合は、必要に応じて当事務所の代表税理士が現在の税理士の方へ連絡し、スムーズに変更できるよう対応します。まずはお気軽にご相談ください。

まとめ|決算書が変われば会社の未来が変わる

決算書は、会社の過去をまとめた書類であると同時に、会社の未来を左右する書類です。

だからこそ、「税理士に任せているから安心」ではなく、税理士がどのような姿勢で、どこまで事業を理解して決算書を作ってくれているかを知ることが、経営者にとって大変重要です。

決算書は誰が作っても同じではありません。税理士が違えば、数字の見え方が変わり、数字の見え方が変われば、経営判断が変わります。そして、経営判断が変われば、会社の未来も変わります。

調査官時代から、税理士・中小企業診断士として仕事している現在まで、質の悪い決算申告書で痛い目を見てきた経営者を多くみてきました。決算書を作成する税理士選びは「会社の寿命を左右することがある」ということも、ぜひ覚えてもらいたいです。

私たちは単なる作業屋ではなく、経営者の相談役として、事業の実態に合った高品質な決算書づくりを信念にしています。元国税調査官としての経験、数字を大事にする税理士・中小企業診断士としての視点、自計化支援、迅速な月次試算表の提供などを通じて、税務だけでなく経営にも役立つ数字を整えることを重視しています。

無料相談実施中

当事務所では無料相談を実施しています。「今の決算書は、本当に経営に役立っているだろうか」 「今の税理士は、事業のことを本当に理解してくれているだろうか」など、少しでも不安がある方は一度ご相談ください。

顧問契約は、お客様と事務所とのミスマッチがない場合のみとしており、強引に契約を勧めることは一切ありません。無料相談だけのご利用も歓迎していますのでご安心ください。

顧問契約されたお客様については、税務調査と金融機関の評価を意識した会計処理と税務判断、融資を引き出す事業計画書の作成、税務調査の確率を大幅に下げる書面添付の提案・導入など、税務はもちろん、財務や経営をサポートするサービスを提供しています。

近年は税制が複雑になっていますが、制度をうまく活用できれば、事業の継続・成長・発展につながるほか、制度によっては大きな節税も実現できます。その一方で、制度の内容や取引実態の確認不足による誤った処理など、税務調査で否認されるリスクも高まっています。

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で10年以上、法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。在籍中に中小企業診断士登録。その後、高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、より多くのお客様に安心と満足を提供するため独立開業。
顧問先様の「税務調査ゼロ」を掲げ、年間30件以上の創業支援を手がけるとともに、酒類販売免許に強い行政書士として活動。令和7年度からは大阪産業創造館の「経営サポーター」として大阪の経営者を多角的に支えている。趣味はダンス・筋トレ・ゲーム

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