【元国税調査官が解説】税務署からの電話・お尋ねは「税務調査」?「簡易な接触(行政指導)」の正しい対応法

近年、税務署から「お尋ね」の文書が届いたり、突然電話がかかってきたりするケースが急増しています。これらは専門用語で「簡易な接触」と呼ばれます。

特に確定申告期間の終了後、この簡易な接触は増加します。

初めて税務署から連絡が来ると、「もしかして税務調査!?」「何か悪いことをしたのか」と驚かれる個人事業主や社長も少なくありません。

しかし、結論から言うと、実務上「簡易な接触」は「税務調査」ではなく「行政指導」と考えて差し支えありません。

この2つは似て非なるものであり、対応を間違えるとペナルティ(加算税)の対象になるリスクもあります。特に電話対応には注意が必要です。

今回のブログでは、元国税調査官の視点から、簡易な接触の正体、税務調査との決定的な違い、そしてトラブルを防ぐための具体的な対応方法を解説します。

目次

「簡易な接触」とは何か?

国税庁の資料において、簡易な接触とは以下のように定義されています。

税務署等において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するもの

簡単に言えば、「申告内容に計算ミスやうっかり間違いがありそうなので、確認して直してくださいね」という、税務署からの比較的ライトなアプローチです。

なぜ今、「簡易な接触」が増えているのか

背景にあるのは調査事務の効率化です。

現在、国税庁は約56,000名という限られた人員で、悪質な納税者への調査に注力する方針をとっています。データ分析やAI活用が進んだことで、「うっかりミス」レベルのものは時間をかけずに書面や電話(簡易な接触)で済ませ、重い事案にリソースを集中させているのです。

実際に、実地調査の件数自体は減っていますが、効率化によって追徴課税の総額は増加傾向にあります。

どんな連絡が来るのか(書面と電話)

1. 書面による接触(お尋ね文書)

「申告内容等についてのお尋ね」といったタイトルの文書が届きます。

対象となりやすいのは以下のようなケースです。

  • 相続が発生したとき
  • 住宅を購入したとき
  • 年末調整の扶養控除に誤りがあるとき

簡単な回答で済むものもあれば、法的な根拠の説明が必要なものもあります。私が税務署(法人課税部門)にいた頃は、無申告の疑いがある法人に対して、まずこの文書を送付していました。

2. 電話による接触

電話で「計算が合っているか確認したい」「書類を送ってほしい」といった依頼が来ます。

私が実際に受けた例としては以下のものがあります。

  • 賃上げ税制の計算確認
  • 輸出業者の消費税還付に関する書類提出依頼

ここで注意が必要なのが、この「電話」です。

税務職員自身が「税務調査」と「行政指導」の法的な違いを曖昧にしたまま電話をかけてくるケースが多々あるからです。

最大のポイント:「行政指導」と「税務調査」の違い

実務上、簡易な接触 = 行政指導 と考えて問題ありません。

では、本来の「税務調査」とは何が違うのでしょうか。ここが最も重要なポイントです。

項目行政指導(簡易な接触)税務調査
法的性質任意の協力要請(行政手続法)質問検査権の行使(国税通則法)
強制力原則なし(断れるが調査に移行するリスクあり)あり(受忍義務がある)
ペナルティ加算税はかからない
※自主的な修正申告扱い
加算税がかかる
※指摘による修正申告扱い
事前通知不要(突然来る)原則あり(事前通知)

違い①:ペナルティ(加算税)の有無

  • 行政指導: 指摘を受けて修正申告をしても、「自主的な見直し」とみなされ、過少申告加算税(原則10%〜)はかかりません
  • 税務調査: 調査官の指摘で修正申告をした場合、ペナルティとして加算税が課されます

違い②:質問検査権の行使

  • 行政指導: あくまで「お願い」ベースです。
  • 税務調査: 法律(国税通則法)に基づく強い権限(質問検査権)が行使され、帳簿を見せる義務が生じます。

トラブル回避! 電話対応の注意点

前述の通り、税務職員の中には行政手続法を十分に理解せず、電話でなし崩し的に調査のようなことをしてくる人がいます。

もし、電話だけで対応して後から「あれは税務調査としての指摘でした」と言われてしまうと、加算税がかかってしまうリスクがあります。

電話がかかってきたら必ず確認すること

税務署から電話があった際は、本題に入る前に必ず以下のことを確認してください。

「このお電話は、行政指導(簡易な接触)としての連絡でしょうか? それとも国税通則法に基づく税務調査の事前通知でしょうか?」

本来、行政指導を行う場合、職員は「行政指導の趣旨・内容・責任者」を伝えなければなりません(行政手続法第35条)。しかし、これを守らない職員が非常に多いのが実情です。

あやふやなまま対応せず、「これは行政指導ですね(=加算税はかからない自主修正の範囲ですね)」という言質を取ることが、身を守るための鉄則です。

過剰な要求には「NO」を

行政指導はあくまで任意の協力です。にもかかわらず、執拗に帳簿のコピーを求めたり、強い口調で是正を迫ったりする場合は、「行政指導の範囲を逸脱していませんか?」と指摘することが可能です。

場合によっては、書面による正式な指導を求めたり、行政指導の中止を求めることも法律上認められています。

まとめ:恐れず正しい対応を

法人に対する簡易な接触の件数は増加しており、これによる申告漏れ指摘金額も過去最高となっています。今後、経営者や税理士がこの対応をする機会は確実に増えるでしょう。

重要なポイントの復習

  1. 簡易な接触は「税務調査」ではなく「行政指導」。
  2. 行政指導による修正申告なら、ペナルティ(加算税)はかからない。
  3. 電話が来たら「これは行政指導ですか?」と必ず確認する。

この知識があるだけで、不要なトラブルやペナルティを回避できます。

いしい税理士・行政書士事務所の強み

当事務所の強みは、税務・会計はもちろん、国税組織の内規や実情に精通していることです。

代表税理士の「ハイレベルな税理士法人での実務経験」と「元国税調査官としての経歴」を掛け合わせ、圧倒的な税務調査対応力を提供します。

私たちは、お客様の税務調査件数「ゼロ」を目指しています。

しかし、万が一税務調査や簡易な接触となった場合でも、法律に基づき徹底的にお客様を守ります。

税務調査に不安がある方、税務と経営の両面から強いサポートを求める経営者の方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。

免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で10年以上、法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。在籍中に中小企業診断士登録。その後、高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、より多くのお客様に向き合うため独立開業。
顧問先様の「税務調査ゼロ」を掲げ、年間30件以上の創業支援を手がけるとともに、酒類販売免許に強い行政書士として活動。令和7年度からは大阪産業創造館の「経営サポーター」として大阪の経営者を多角的に支えている。

目次