【保存版】忘年会・新年会の経費処理完全ガイド|最新の税制とインボイス対応のポイントも解説

年末年始の恒例行事である忘年会や新年会。幹事にとっては会場選びが悩みどころですが、経理担当者や経営者にとっては「この飲み代、どう処理するのが正解か?」と悩む時期でもあります。
特に2024年度(令和6年度)の税制改正やインボイス制度の導入により、経費処理は複雑化しています。「たかが飲み会」と侮ると、税務調査で手痛い指摘を受けるリスクも。
このブログでは、実務上検討すべき主要な勘定科目の判定基準から、最新の法改正対応、そして「二次会」「景品」といった具体的シチュエーションまで、元国税調査官の視点も織り交ぜて解説します。
勘定科目判定の全体像

忘年会費用の処理は、企業の恣意的な決定ではなく、行事の「対象者」「目的」「金額」「実態」という4要素によって客観的に決定されます。実務上使用される主な科目は以下の4つです。
①福利厚生費:会社にとっての最適解(全額経費)交際費
②-1交際費(接待交際費):社外接待用(制限付き経費)
②-2交際費(社内飲食費):最も避けるべき区分(経費になりにくい)
③会議費:2024年改正で大助かり(一人あたり1万円以下なら全額経費)
④給与:最悪のケース(個人への課税発生)
まずは、それぞれの科目ごとの属性・経費性・要件を整理した次の表をご覧ください。
| 勘定科目 | 適用対象の主たる属性 | 損金算入(経費化) | 要件・制約 | 備考 |
| 福利厚生費 | 全従業員(社内) | 全額OK | 機会の平等性、社会通念上妥当な金額 | 税務メリット最大 |
| 交際費(接待飲食費) | 取引先等(社外) | 制限付きOK | 資本金規模による限度額あり | 1人1万円超の場合に適用 |
| 交際費(社内飲食費) | 役員・特定社員(社内) | 原則NG | 50%特例等の適用不可 | 最も避けるべき区分 |
| 会議費 | 社内外問わず(実態重視) | 全額OK | 1人1万円以下(社外飲食)、会議の実態 | 2024年改正のポイント |
| 給与(現物給与) | 特定個人 | OK(要源泉徴収) | 個人への所得税課税が発生 | 高額な景品や現金支給時 |
「福利厚生費」として処理するための厳格なルール

企業にとって最も望ましいのは、交際費課税の枠外で全額を経費計上できる「福利厚生費」です。しかし、単に「社員のための飲み会」であれば良いわけではありません。以下の2つの要件をクリアする必要があります。
① 「機会の平等性」の原則
福利厚生費の大原則は「全従業員を対象としていること」です。
【OKな例】
①全社員に案内を出し、結果的に欠席者が出た場合
②全社一斉が難しいため、「部署単位」や「支店単位」で開催するが、会社全体として全員に参加機会があり、費用負担基準が一律である場合
【NGな例】
①特定の役員のみ
②特定の仲良しグループ
③特定のプロジェクトメンバーだけの打ち上げ
これらは「特定の者への利益供与」とみなされ、福利厚生費から除外されます。家族経営の会社で「①特定の役員のみ」があれば、給与課税のリスクが高いです。
② 「社会通念上相当な金額」の壁
金額に法令上の明確なラインはありませんが、実務上「一次会費用として1人当たり5,000円〜10,000円程度」が妥当なラインとされています。
高級ホテルでの宿泊宴会や、1人数万円の料亭などは「豪華すぎる慰安」として否認されるリスクが高まります。
「交際費」の注意点:社内と社外の大きな違い

交際費は、「誰と飲食したか」によって大きな差が生まれます。
要注意の「社内飲食費」
社外の取引先がおらず、かつ福利厚生費の要件(全社員対象)も満たさない飲み会は「交際費(社内飲食費)」となります。
ここが重要なポイントですが、社内飲食費は「接待交際費の50%損金算入特例」などが一切使えません。
中小法人:年間800万円の枠を消費してしまいます
資本金1億円超の企業:全額が損金になりません
会社の規模による「交際費」の上限
資本金1億円以下(中小法人):「年間800万円まで全額経費」か「飲食費の50%を損金」の有利な方を選択
資本金1億円超〜100億円以下:「飲食費の50%」のみ損金可能
資本金100億円超:全額損金になりません
2024年改正による「会議費」の新基準(1万円ルール)

2024年度(令和6年度)の税制改正で影響が大きかったのが、「交際費等から除外される飲食費」の基準額引き上げです。
1人当たり5,000円 → 10,000円へ
これまで「1人5,000円以下」だった基準が、飲食店応援などを背景に「1人10,000円以下」へと倍増しました(2024年4月1日以後の支出より)。これにより、今まで交際費処理していた少し良いお店での接待も、会議費として全額経費にできる余地が広がりました。
適用するための条件
この「1万円ルール」を適用するには条件があります。
①社外の者が参加していること
「社員だけの忘年会」には適用されません。社員のみの場合は、前述の「福利厚生費」か「社内飲食費」の二択です。
②飲食費であること
ゴルフや観劇、送迎タクシー代は対象外です。
③証憑書類の保存
「年月日」「参加者の氏名・関係」「参加人数」「金額・店名」の記録が必要です。
インボイス制度が招く「判定の複雑化」

「1万円以下ならOK」と思いきや、インボイス制度がここに複雑な計算を持ち込みます。「税込経理」か「税抜経理」か、そして「店がインボイス登録店か」によって、判定金額が変わります。
税抜経理方式を採用している企業の場合
通常は「税抜価格」で判定しますが、インボイス未登録店(免税事業者等)を利用した場合、経過措置(80%控除)の影響を受けます。
※経過措置について、令和8年10月1日~令和11年9月30日までは50%となる予定(今後の税制改正により、変更される可能性あり)
【シミュレーション:1人税込11,000円を支払った場合】
①インボイス登録店を利用
計算:11,000円 ÷ 1.1 = 10,000円
結果:ギリギリ「会議費(全額経費)」OK!
②インボイス未登録店を利用
計算:消費税相当額の20%分を経費本体に加算する必要がある
実質判定額:10,200円
結果:1万円超のため「交際費」扱い(枠を消費)
たった200円の差ですが、未登録店を利用すると「会議費」とならないことがあります。中小法人は科目が違っても法人税額に影響することは稀ですが、交際費の制限がある規模の会社は法人税額に影響してきます。
重箱の隅のような論点ですので、規模の大きい会社以外はそこまで気にしなくてよいでしょう。2023年9月の日経新聞による国税庁長官のインタビュー記事で、長官が「軽微な記載のミスを確認するための調査はこれまでしてきていない。記載事項(の不備)をあげつらうような調査はしない」と語っているからです。
よくある質問:二次会・景品・現金支給・個人事業主

Q1. 二次会も福利厚生費になりますか?
A. 原則として「社内交際費」になります。
一次会が全社員対象(福利厚生費)であっても、二次会は「有志のみ」で行われることが一般的です。有志の飲み会は福利厚生の要件を満たしません。
会社が公式に二次会をセットし、全額負担すれば福利厚生費の可能性もありますが、今度は一次会との合計額が「高額すぎる」として否認されるリスクもあります。
Q2. ビンゴ大会の景品はどう選ぶべき?
A. 「商品券・現金」は避けるべきです。
物品(家電・雑貨等):常識的な金額であれば福利厚生費に含めてOK
商品券・現金:換金性が高いため、税務署はこれを「給与(賞与)」とみなします。給与認定されると、源泉所得税の徴収漏れや消費税仕入税額控除の否認など、事務処理が非常に煩雑かつ高コストになります
Q3. 不参加者に現金を渡して公平にしたいのですが?
A. 絶対にNGです。
不参加者に現金を渡す(選択権がある)と、参加者の食事代までもが「現物給与」とみなされるリスクがあります。「福利厚生」とは、現物給与として課税しなくてよい特例的なものです。現金の選択肢を与えた瞬間、その特例の根拠がなくなります。
Q4. 個人事業主ですが、家族で忘年会をしました。経費になりますか?
A. 家族(専従者)のみの場合は経費になりません。
個人事業主が福利厚生費を使えるのは「家族以外の従業員を雇用している場合」に限られます。家族だけの食事会は「家事費(生活費)」とみなされます。
税務調査で否認されないための「証憑保存」

最後に、適正な処理を証明するための「証拠」についてです。領収書だけでは不十分です。
①領収書への追記:参加人数、参加者の氏名(社外の場合)を記載する
②案内メール等の保存:「全社員に周知された公式行事であること」を証明するため、社内アナウンスのメールや掲示物を保存しておく
③目的の明記:「全社忘年会」「〇〇プロジェクト打ち上げ」など、摘要欄に具体的に記載する
まとめ:経費処理ガイド
忘年会や新年会は、リモートワークで希薄になりがちな社内コミュニケーションを円滑にする貴重な機会です。「正しいルールを知っているからこそ、堂々と盛大に開催できる」という状態が理想です。
①目的の明確化:「慰労(福利厚生)」か「接待(交際費)」かを事前に決める
②お店の選定:(規模の大きい会社の場合)インボイス登録店であることを確認する
③社内ルールの周知:二次会は自己負担とするか、景品に金券を使わないよう幹事に指示する
④証憑の徹底:参加人数とメンバーがわかる記録を領収書と共に残すルールを徹底する
ここまで読んで「理屈は分かったけど、実務で毎回ここまで判断するのは正直大変…」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際の現場では、
✔ 幹事が決めた店
✔ 当日の参加者変更
✔ インボイスの有無
など、想定外のことが必ず起こります。
当事務所では、「その会社にとって、今どこまで気にすべきか」「逆に、そこまで神経質にならなくていい点」を切り分けてお伝えしています。
事前確認・セカンドオピニオンとしてのご相談も歓迎しています。年末年始の行事を安心して開催するための事前相談として、ぜひご活用ください。
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