マルサより怖い?ドラマ『おコメの女』の舞台・資料調査課の実態

先週からスタートした『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』、みなさんはご覧になりましたか?

劇中でも描かれていましたが、実は税務調査には「強制調査(マルサ)」と「任意調査(一般調査)」の2種類があり、その権限には天と地ほどの差があります。

「ドラマのあのシーン、実際の調査でもありえるの?」 「資料調査課って、本当は何をしてるの?」

そんな疑問に答えるべく、国税組織に12年間在籍した私が、経験者だからこそ語れる「リアルな実態」と「裏話」を解説します。

目次

資料調査課の隠語である「コメ」

まずは、ドラマのタイトルの『おコメ』について、国税の隠語で『資(シリョウ→コメ)』を扱う部署であることに由来します。

ちなみに、資料調査課の隠語は、大阪国税局では「リョウチョウ」、東京国税局では「リョウチョウ」または「建物のフロア数」、私が所属していた関東信越国税局では「アール」が隠語の定番でした。

「コメ」も隠語で通用しますが、全国的には「リョウチョウ」が一般的です。隠語にはおかしなものや不自然なものもあり、多用するとかえって怪しさにつながることが多いです。

「強制調査」と「任意調査」の違い

次に、税務調査の全体像を整理しましょう。最大の違いは、「裁判所の令状があるかどうか」です。

① 強制調査(通称:マルサ)

  • 対象: 多額の脱税や悪質な隠蔽工作が疑われる事案(年間100〜200件程度)
  • 権限: 裁判官の令状(許可状)に基づき、ドアチェーンの切断や金庫の破壊など物理的な強制力を行使可能
  • 目的: 追徴課税だけでなく、検察への告発(刑事罰)が主目的

② 任意調査(一般調査)

  • 対象: 一般的な申告漏れやミスの是正(資料調査課の場合は、刑事罰までには至らない脱税や悪質な隠蔽工作が疑われる事案)
  • 権限: 物理的な強制力はありません。勝手に引き出しを開けたり、体を拘束したりすることは違法
  • 目的: 正しい申告納税
項目強制調査(マルサ)任意調査(一般調査)
法的根拠国税通則法 第11章「犯則調査」国税通則法 第7章の2「質問検査権」
令状必要不要
強制力直接強制(実力行使OK)間接強制(受忍義務)

「任意」なのに拒否できない?「間接強制」とは?

「任意調査なら、断ってもいいの?」と思われるかもしれません。ここで重要なのが「受忍義務(じゅにんぎむ)」です。

権限の付与: 法律が調査官に調査する権利を与えている。
罰則の存在: 調査を拒否した者に対する罰則(法128条)が存在する。
結論: 拒否すると罰せられる以上、「法的に調査を受け入れ(受忍し)、協力する義務がある」ということです。

②について、正当な理由なく調査を拒否すると「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則があります。 しかし、実際に単なる調査拒否で罰則となるケースは稀です。

調査官はこの罰則を「協力しないと罰則ですよ」という心理的な圧力(交渉カード)として使いますが、実際には物理的に無理やり調査を進める権限は持っていないのです。

だからこそ「明示の承諾」が必要

任意調査において、調査官はあなたの許可なく調査(帳簿書類等の確認や物に触れる)はできません。そのため「明示の承諾」を得て調査を行います。資料調査課の調査は、任意調査の範囲を超えたものとなりやすく、承諾が明確でなかったなどトラブルが多いのが実情です。

沈黙は「イエス」とみなされる

調査官が「この引き出しを見ますね」と言って手を伸ばしたとき、あなたが何も言わずに見ていただけだとします。裁判所はこれを「拒否しなかった=承諾した」とみなすケースが多いです。

従業員や家族の承諾でもOK

また、社長が不在でも、従業員や家族が「いいですよ」と言ってしまえば、調査は適法とみなされます。調査の現場ではトラブル回避のため、原則として社長または役員の承諾を得ることとしています。

税務調査に強い税理士の税務調査対策

ドラマにはなかったですが、調査を円滑に進めるために、顧問税理士の立ち会いのもと調査を開始すべきです。その他、社長視点で税務調査の正しい対応や対策があります。詳しくは以下のブログで解説しています。

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国税局の「資料調査課」という部隊

資料調査課(コメ・リョウチョウ)は「最強の実地調査部隊」と言えます。

資料調査課と税務署の違い

・税務署では手に負えない大口・複雑・広域案件を担当
・あくまで「任意調査」だが、調査能力は極めて高い
・脱税の端緒となる生の情報(取引情報・銀行データ・タレコミなど)から狙い撃ち

調査スタイル

・事前予告なし(無予告調査)が多い
・調査期間が長い(半年~1年)
・重加算税狙い(脱税=「仮装・隠蔽」を暴く)

組織内での役割

資料調査課は、独自に調査を行うだけでなく、「リサーチセンター」としての機能も持ちます。

情報の蓄積
あらゆるルートから「カネの動き」に関する情報を集める(これを「資料せん」と呼ぶ)

ターゲット選定
集まった資料を分析し、「ここは怪しい」というターゲットを絞り込む

案件の振り分け
・自分たちで調査する(料調事案)
・各地の税務署に情報を流して調査させる(主に特調部門(通称:トクチョウ)が対応)
・あまりに悪質、多額な場合は、査察部(マルサ)へ引き継ぐ

元国税調査官が語る「資料調査課の裏話」

警察・軍隊のような「厳格な規律」

資料調査課(リョウチョウ)や査察(マルサ)は、集団行動を基本とし、強靭なメンタルと高い規律が求められる部署です。関東の国税局在籍時には、以下のようなルールも存在しました。

男性: ネイビーのスーツ、短髪で額を出すスタイル
女性: パンツスーツ、就活生のような堅実な身だしなみ
あいさつ:幹部や上司の出勤時に起立してあいさつ

圧倒的な調査能力と組織的プレッシャー

彼らの調査におけるスピード感や脱税を暴くテクニックは圧倒的ですが、その背景には過酷な環境があります。

二重のプレッシャー
納税者からの圧力以上に、組織幹部や上司からの内部プレッシャーが強烈。メンタルに不調をきたす職員も。

感覚の麻痺
調査が長期化しプレッシャーに晒され続けると、納税者への感覚が麻痺し、「相手を犯罪者のように扱う」言動に繋がる。これが経営者からの苦情(「犯罪者扱いされた」等)の主たる原因。

まとめ|ドラマを楽しみつつ、現実の税務調査を正しく知る

『おコメの女』は、国税組織の中でも一般にはほとんど知られていない「資料調査課」にスポットを当てた、非常に挑戦的なドラマです。

ドラマとしての演出はありつつも、「強制調査と任意調査の違い」「無予告調査の緊張感」「調査官との心理戦」など、実務経験者から見てもリアルだと感じる要素が随所に盛り込まれています。

一方で、現実の税務調査は、派手さこそないものの、知識の差・準備の差・対応の差が結果を大きく左右します。
特に資料調査課による調査は、任意調査でありながらも高度で、精神的な負担が大きくなりがちです。

だからこそ重要なのは、
・正しい申告を心がけること
・税務調査の仕組みと権限を知っておくこと
・いざという時に、調査対応に慣れた税理士に相談できる体制を整えておくこと

ドラマはドラマとして楽しみつつ、「これは他人事ではない」という視点で見ると、学べることは意外と多いはずです。

もし、「正しい申告ができているか自信がない」「今の税理士が頼りにならず税務調査が不安だ」などのお悩みがある方は元国税調査官の税理士が相談に対応します。

無料相談を実施中ですので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で10年以上、法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、より多くのお客様に向き合うため独立開業。
顧問先様の「税務調査ゼロ」を掲げ、年間30件以上の創業支援を手がける。酒類販売免許に強い行政書士としても活動し、令和7年度からは大阪産業創造館の「経営サポーター」として大阪の経営者を多角的に支えている。

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