従業員が退職するときの手続ガイド(住民税・所得税・退職金・社会保険)

従業員の退職は、業務の引き継ぎだけでなく、税務・労務の手続きで非常に慌ただしくなるタイミングです。特に税務関係は「いつ退職するか」によって対応が変わるため、正確な知識が求められます。
今回は、従業員が退職する際に会社が行うべき手続を、網羅的に解説します!
住民税(特別徴収):退職時期で手続が変わる!

最も注意が必要なのが「住民税」です。給与から天引き(特別徴収)していた住民税をどう処理するかは、「退職する月」によってルールが異なります。
①6月1日〜12月31日に退職する場合
基本的には「普通徴収(自分で納付)」に切り替えます。 ただし、本人が希望すれば、残りの税額を最後の給与や退職金から一括で徴収(一括徴収)することも可能です。
②1月1日〜5月31日に退職する場合
原則として「一括徴収」が義務付けられています。 本人の希望に関わらず、5月分までの残りの住民税を、最後の給与または退職金からまとめて天引きし、会社が納付しなければなりません。最後の給与が少なくて住民税を引ききれない場合は、例外的に普通徴収への切り替えが認められます。
③退職後、次の転職先に空白期間なく転職する場合
従業員の希望があれば、転職先の会社で特別徴収を継続することができます。実際には、従業員が退職する会社にこのことを言い出しにくく、さらには退職する会社と転職先の会社で事務手続が必要ということもあり、この方法を行うことはほとんどありません。
【会社の対応】
市区町村へ「給与所得者異動届出書」を提出し、「普通徴収」への切り替え、「一括徴収」「特別徴収継続」の手続を行う。異動届出書の提出期限は退職月の翌月10日まで
各市区町村別の異動届出手続⇒八尾市・東大阪市・柏原市・松原市・大阪市
小規模な会社や中小企業は税理士が手続を行うことがあります。税理士に従業員が退職した旨を速やかに伝えないと手続もれとなりますので注意が必要です。
所得税:最後の給与計算と源泉徴収票

① 最後の給与計算(源泉徴収)
退職日までの給与計算を行い、通常通り所得税を源泉徴収します。
※12月に退職し、年内に給与の支払いが完了する場合など、一定の場合は会社で年末調整を行うこともあります
② 源泉徴収票の発行
退職の日から1ヶ月以内を目安に「給与所得の源泉徴収票」を作成する必要があります。源泉徴収票には「退職日までに支払った給与総額」、「徴収した社会保険料」「源泉所得税額」などが記載されます。退職者本人が次の会社で年末調整を受ける際や、自分で確定申告をする際に必ず必要になる重要書類です。
【会社の対応】
①最後の給与計算(源泉徴収)を行う
②退職の日から1ヶ月以内に「給与所得の源泉徴収票」を作成し、退職者本人に交付
小規模な会社や中小企業は税理士が「源泉徴収票」を発行することがあります。税理士に従業員が退職した旨を速やかに伝えないと交付もれとなりますので注意が必要です。
退職金を支払う場合の手続

退職金を支給する場合、給与とは別に税金の計算が必要です。退職金は税制優遇が大きいため、手続に注意が必要です。税理士が手続や計算することが多いため、退職金の支払予定がある場合は、税理士に連絡しましょう。
①「退職所得の受給に関する申告書」を退職者本人から提出してもらう
この申告書の提出の有無により、税金の計算などが変わってきます。
・「退職所得の受給に関する申告書」がある場合
退職所得控除(勤続年数に応じた控除)を適用し、課税退職所得金額の半分に対して課税されます。多くの場合、税額がかなり低く抑えられます。会社で税額を計算・徴収して納税すれば完了です(分離課税)。
※勤続年数5年以下の役員等でない従業員については、退職金から控除額を引いた残額が300万円を超える部分については2分の1課税が適用されません
・「退職所得の受給に関する申告書」がない場合
退職金の支給額に対して、一律 20.42% の源泉徴収が必要になります。退職者本人が後で確定申告をしないと所得税が精算されません。
②退職所得の源泉徴収票の作成
退職金を支払った場合、退職日から1ヶ月以内に退職者本人に交付しなければなりません。
【会社の対応】
①「退職所得の受給に関する申告書」を退職者本人から提出してもらう
②「退職所得の源泉徴収票」を退職者本人に交付
※「退職所得の源泉徴収票」は税理士が作成することが多い
退職金は税制優遇が大きいため、税額が発生するケースはまれですが、税額が発生した場合、退職者の住所地のある都道府県と市区町村にも納税が必要です(分離課税)。
※納税の際は、毎月の給与分の住民税とは分け、『退職所得分』として納付書に記載(または別納付)する必要があります
社会保険などの手続
税務ではありませんが、セットで行う必須手続です。

社会保険(健康保険・厚生年金)
【会社の対応】
①保険証の回収
退職日までに(あるいは郵送で速やかに)本人と扶養家族分の健康保険証を回収
②資格喪失届の提出
退職日の翌日から5日以内に、年金事務所へ「被保険者資格喪失届」を提出
雇用保険
【会社の対応】
①資格喪失届の提出
退職日の翌日から10日以内に、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出
②離職証明書の提出
①と併せて、ハローワークへ「雇用保険被保険者離職証明書」を提出
※退職者本人が「失業給付(失業保険)」を受けるために必要な「離職票」を発行してもらう手続。従業員が次の転職先が決まっている等の場合は不要ですが、トラブル防止のため取得し交付することが望ましい
退職手続まとめ
以上の手続をふまえて、退職者が出たときの手続フローをまとめます。
①退職願の受理と退職日の確定
②住民税の処理方法の決定(退職月によって一括徴収か普通徴収か確認)
③健康保険証の回収
④社会保険の資格喪失届の提出(年金事務所へ)
⑤雇用保険の資格喪失届と離職証明書の提出(ハローワークへ)
⑥住民税の異動届出書の提出(市区町村へ)
⑦最後の給与計算・退職金計算(必要に応じて「退職所得の申告書」回収)
⑧源泉徴収票の発行・送付
最後に
従業員の退職時の手続は、「やることが多い」「期限が短い」「退職日によって対応が変わる」という三重苦になりがちです。
特に注意が必要なのが、
- 住民税(退職月による一括徴収・普通徴収の判断)
- 源泉徴収票・退職所得関係書類の発行期限
- 社会保険・雇用保険の資格喪失手続の期限管理
これらを一つでも誤ると、
- 従業員とのトラブル
- 市区町村や税務署からの指摘
- 後からの修正・追加対応
につながるリスクがあります。
退職は突発的に決まることも多いため、「決まったらすぐ専門家に連絡する」これが最も確実な対策です。
当事務所では、「住民税・所得税・退職金の税務対応」「源泉徴収票等の作成」「必要に応じた社会保険労務士との連携」まで含めて、退職手続をトータルでサポートしています。
「このケースはどうなる?」
「一括徴収になるのか不安…」
そんな疑問が出た段階で構いません。
従業員の退職が決まった際は、手続漏れを防ぐためにも、ぜひお早めにご相談ください。
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