決算賞与で節税|損金算入3要件と否認回避を元国税調査官が解説

こんにちは!八尾市のいしい税理士・行政書士事務所の石井です。

今回のブログのテーマは「決算賞与」です。決算時期の節税のイメージが強いかもしれませんが、数ある節税の中でも投資につながるものです。うまく活用すれば、節税と組織強化を同時に実現できます。

しかし、税務上の要件があり、一歩間違えると税務調査で全額否認されるリスクに。特に「決算賞与の未払計上」は調査官がチェックする定番論点の1つです。私自身も多くの会社の決算賞与が要件を満たすかチェックしていました。

このブログでは、調査する側にいた経験をふまえ、経営者が知っておくべき決算賞与の戦略的な活用法と、否認されないための実務上の注意点をわかりやすく解説します。

目次

決算賞与とは?

決算賞与とは、事業年度の業績が確定する決算期前後に、その期の利益を従業員へ還元するために支給する臨時の賞与のことです。夏・冬の定期賞与とは異なり、「利益が出た期にだけ支給する成果配分型のボーナス」という性質を持ちます。

決算賞与と役員賞与の違い

混同されやすいのが「役員賞与」ですが、両者は税務上のルールがまったく異なります。違いを先に整理しておきましょう。

項目決算賞与(従業員向け)役員賞与
対象者従業員役員
事前の届出不要事前確定届出給与の届出が必要
損金算入要件を満たせば未払計上でも損金OK届出どおりに支給しないと損金不算入
支給額の決定期末の利益を見て柔軟に決定できる原則として期首に確定させる必要あり
主な目的社員還元・モチベーション向上・節税役員報酬の補完

このように、決算賞与は届出が不要で期末の利益状況を見ながら柔軟に決定できる点が最大のメリットです。役員のルールについては後述します。

決算賞与の3つのメリット

決算賞与の導入は、以下の3つの領域において大きな価値を発揮します。

① 法人税の節税

利益をそのままにすると、約30%(中小企業で所得800万円以下の場合約23%〜25%)の実効税率で課税されます。決算賞与を損金(費用)として計上することで、「税金として国に納めるはずだった資金」を「従業員への還元」へ変えることができます。

要件を満たせば、決算期末に現金を支払っていなくても(未払計上)、当期の損金として認められます。

② 組織モチベーションと採用力の向上

決算賞与は「会社の利益が自分たちの報酬になる」という成果の見える化と還元を実現します。

毎年の夏・冬の賞与と異なり、業績が良い時だけのプラスアルファであるため、従業員のロイヤリティを高めやすい性質があります。また、利益を還元する姿勢は、優秀な人材の定着や採用面において大きなプラスとなります。

③ 柔軟な利益調整

役員賞与と違い、税務署への事前届出が不要です。期末直前の利益状況を見ながら、支給額を決定できる柔軟性も大きなメリットです。また、固定費である人件費の一部を変動費化させる効果もあります。

【最重要】損金算入の3要件

決算で「未払金」として計上し、当期の節税効果を得るためには、法人税法施行令第72条の3に定められた以下の要件をすべて満たす必要があります。

要件内容と実務上の留意点
① 同時通知決算日までに、各個人別の支給額を、対象者全員に通知していること。
② 1ヶ月以内の支給決算日の翌日から1ヶ月以内に実際に支払うこと(例:3月末決算なら4月末まで)。1日でも遅れると当期の損金にできない。
③ 当期の損金経理通知した事業年度の決算書において、費用処理していること。

【元国税調査官の税務調査対策】根拠記録を必ず残す!

調査で問われるのは「本当に決算日までに、個人別の金額を通知したか」です。ここで口頭通知のみだと、決算日までに債務が確定していたことを証明できず、否認の対象に。書面やメールなど日時の記録が残るよう通知し、受領印やサインをもらう、これらをルール化しましょう。

実務上の注意点① 就業規則の「在籍要件」

ここが否認されやすいポイント。多くの企業の就業規則には、以下の規定があります。

「賞与は、支給日に在籍している者に支給する」

この規定があると、決算日(3/31)時点では「4月の支給日にその人が辞めているかもしれない」ため、債務が確定していないことになります。その結果、未払計上が否認されてしまいます。

解決策

決算賞与を未払計上したい場合は、次のように就業規則を見直す必要があります。

「賞与の支給日に在職しない場合には、当該賞与は支給しない。ただし、決算賞与については、この限りではない。」

と規定すれば、税務上は問題ありません。ただし就業規則は社会保険労務士の領域ですので、専門家と連携した慎重な判断が必要です。

なお、賞与を決算日までに実際に支払ってしまえば、就業規則も前述の3要件も無関係になります。確実性を重視するなら、早期の支払いを検討するのも有効です。

実務上の注意点② 社会保険料は当期の損金にならない

決算賞与の「本体」は当期の損金になりますが、付随する社会保険料(会社負担分)は原則として当期の損金にはなりません。

社会保険料の債務が確定するのは「支給した月の末日」です。3月決算・4月支給の場合、社会保険料は4月(翌期)の費用として処理しなければなりません。発生主義でセットで未払計上しがちですが、決算賞与においては計上できないため注意しましょう。

実務上の注意点③ 役員はルールが異なる

冒頭の比較表のとおり、役員はルールがまったく異なります。税務署へ事前に「事前確定届出給与」の届出をしておかないと、原則として経費(損金)になりません。 詳しくは下記の記事で解説しています。

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経営者へのアドバイス

決算賞与は決算時の節税として有力な選択肢ですが、運用を誤ると逆効果になります。支給前に必ず押さえておきたい3点をお伝えします。

①キャッシュフローの優先
節税のために無理な支給をして資金ショートを起こしては本末転倒です。翌事業年度の見込みや手元資金とのバランスを考慮した上で、いくら支給するか決定しましょう。

②期待値のコントロール
一度支給すると従業員は「来年も」と期待します。「なぜ支給するのか」「支給基準(営業利益の◯%など)」を、社長が全社員に対してきちんと説明することが重要です。

③不払いは厳禁
通知した時点で法的な債務となります。万が一支払えなくなると、従業員との信頼関係が壊れるほか、法的リスクも伴います。

よくある質問(FAQ)

Q. 決算賞与はいつまでに支払えば当期の経費になりますか?
A. 決算日までに各従業員へ個人別の支給額を通知し、決算日の翌日から1ヶ月以内に実際に支払えば、未払計上でも当期の損金になります。例えば3月末決算なら、4月末までの支払いが必要です。1日でも遅れると当期の損金になりません。

Q. 決算賞与の損金算入の3要件とは何ですか?
A. ①決算日までに各個人別の支給額を全対象者へ通知していること、②決算日の翌日から1ヶ月以内に支払うこと、③通知した事業年度に費用(損金)経理していること、の3つです。すべてを満たす必要があり、1つでも欠けると否認されます。

Q. 就業規則に「支給日在籍要件」があると決算賞与は否認されますか?
A. 未払計上の場合は否認リスクがあります。「支給日に在籍している者に支給する」という規定があると、決算日時点で債務が確定していないと判断されるためです。就業規則の見直し、または決算日までに実際に支払うことで回避できます。

Q. 決算賞与の社会保険料(会社負担分)は当期の経費になりますか?
A. なりません。社会保険料の債務が確定するのは支給月の末日のため、3月決算・4月支給なら社会保険料は翌期(4月)の費用になります。賞与本体とは取扱いが分かれる点に注意が必要です。

Q. 役員に決算賞与を出しても経費になりますか?
A. 役員は従業員と異なり、事前に「事前確定届出給与」を税務署へ届け出ておかないと、原則として損金になりません。届出どおりに支給しないと損金不算入となるため、従業員向けの決算賞与とは分けて検討する必要があります。

まとめ

決算賞与の本質は単なる利益の圧縮ではありません。社員たちへの「還元」であり、今後の事業への「投資」です。

ルールを遵守し、適切に支給された賞与は、社員のエンゲージメントを高めます。一方で、形式的な不備で税務調査の指摘を受けてしまえば、せっかくの還元も会社にとって大きな痛手(追徴課税)となってしまいます。

元国税調査官・中小企業診断士として伝えたいのは、「守り」を固めてこそ、「攻め」の効果が最大化されるということです。

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当事務所では無料相談を実施しています。決算賞与の活用を考えている方、就業規則の見直しに不安があれば、ぜひご相談ください。提携している社会保険労務士とともに、万全の体制で御社の成長をサポートします。

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で10年以上、法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。在籍中に中小企業診断士登録。その後、高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、より多くのお客様に安心と満足を提供するため独立開業。
顧問先様の「税務調査ゼロ」を掲げ、年間30件以上の創業支援を手がけるとともに、酒類販売免許に強い行政書士として活動。令和7年度からは大阪産業創造館の「経営サポーター」として大阪の経営者を多角的に支えている。趣味はダンス・筋トレ・ゲーム

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