【税務調査の正しい対応】調査日時の連絡(事前通知)

ほとんどの税務調査は事前に連絡があり、日程調整した上で実地調査が行われます。

調査日時の連絡(事前通知)は、調査官が予定している調査日の2~3週間前にあることがほとんどです。
その際、正しい対応をするためのポイントがあります。

今回のブログでは、そのポイントを解説します。

調査官側の視点や、私が法人の税務調査をしていたときの話も書いていますので、参考になれば幸いです。

目次

税務調査の事前通知について

以下、中小企業の税務調査を前提に解説します。

税務調査の事前通知は、原則として、電話連絡により口頭で行われます。
税務調査は連続した2日間で、時間は10時から16時まで行われることが多いです。

調査官としては、連続した2日間で10時から16時に調査をしたいというのが本音であり、そのとおりになるよう調査日時の予定を伝えます。

事前通知は誰に対して行うか?

平成26年7月1日以後に行う日程調整の連絡(事前通知)は、税務代理権限証書を提出している税理士に行うことが基本です。
※税務署に提出する税務代理権限証書に、納税者の方の同意を記載することが前提

それまでは国税局によって事前通知の方法にバラツキがありました。
税理士に税務調査する旨を伝え調査の日程調整の依頼をする方法、法人の代表者又は役員に連絡し調査を行う旨伝えた上で日程調整は税理士に連絡(税理士が税務署と法人の間に入って調整)する方法に分かれていました。

事前通知の正しい対応

経営者はもちろん、税理士の方も事前通知の正しい対応を知らない方が多いため、具体的に解説します。

日程調整の連絡は、調査官が調査を予定している2週間~3週間前に電話で連絡があります。

国税庁の資料「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」にもその旨が説明されており、時期については明言されていませんが、多くの場合、調査の2週間~3週間前に日時の連絡があります。

問13 事前通知は、調査の何日くらい前に行われるのですか。

実地の調査を行う場合の事前通知の時期については、法令に特段の規定はなく、また、個々のケースによって事情も異なりますので、何日程度前に通知するかを一律にお示しすることは困難ですが、調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています。

調査官からの連絡では、調査の具体的な日付と時間(連続した2日間、時間は10時から16時)を伝えられます。

実際には、社長も税理士も忙しく、日ごろの業務の間に税務調査の対応をしなければなりません。

FAQにあるとおり、「調査までに相当の時間的余裕を置いて行う」こととされているため、いたずらなリスケでなければ、こちらの希望の日程に合わせてもらうことが可能です。

別のFAQで調査日時を変更できるケースの例示もあります。

問16 事前通知を受けた調査開始日時については、どのような場合に変更してもらえるのですか。

税務調査の事前通知に際しては、あらかじめ納税者の方や税務代理人の方のご都合をお尋ねすることとしていますので、その時点でご都合が悪い日時が分かっている場合には、お申し出ください。お申し出のあったご都合や申告業務、決算業務等の納税者の方や税務代理人の方の事務の繁閑にも配慮して、調査開始日時を調整することとしています。

また、事前通知後においても、通知した日時について、例えば、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、申し出ていただければ変更を協議します。

なお、例示した場合以外でも、理由が合理的と考えられれば変更を協議しますので、調査担当者までお申し出ください。

このように、会社や税理士の都合を考慮してもらった上で調査日時を決めることができます。
調査官が希望している調査日時に無理して合わせる必要はありません。

ここで「正しい対応」があります。
正しい対応とは、調査日を1ヶ月程度先でリスケすることです。

「1ヶ月」という期間が重要であり、その間に次のことができるからです。

①税理士が社長や経理担当者に対して、税務調査の心構え・どのように対応するかなどをレクチャーできる
②税務調査で確認される帳簿書類等の準備を余裕をもって行える
③税務調査でよく確認される事項(期ずれ・棚卸資産の計上など)のチェックに時間をかけられる

特に③が重要であり、税務調査でよく確認される事項をチェックし、もし誤りがあった場合は、税務調査前日までに自ら修正申告を行うことが可能です。

調査開始前の自主修正申告の場合、ペナルティとしての加算税が5%(期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分は 10%)に軽減されます。
※過少申告加算税とは、確定申告した税額が実際に支払うべき税額よりも少なかった場合に課される加算税のことです

本来の過小申告加算税は10%(期限内申告税額と 50 万円のいずれか多い額を超える部分は 15%)です。

また、上記のチェックで不正行為(仮装又は隠蔽)が判明した場合、本来は重加算税35%のところ、自主修正申告により加算税が5%に軽減されます。
※重加算税とは、仮装又は隠蔽があった場合に、過少申告加算税に代えて課される加算税のことです

ですので、税務調査の前に社長に対して上記を説明した上で不正行為を行っていないか確認するとともに、税務調査でよく確認される事項をチェックしておくことが重要です。

上記は調査日時のリスケ時の理由にしづらいため、会社と税理士のスケジュールが合わないなどの理由にしておくのがベターです。

実際に、忙しい社長や税理士であれば、調査官が希望する調査日時である「連続した2日間で10時から16時」の対応ができるのは、1ヶ月先ということもよくあります。

なお、当事務所では顧問先様が不正行為(脱税)を行っていた場合、事務所との信頼関係を失うこととなりますので、税務調査終了次第、顧問契約を解除することとしています。

日程調整(事前通知)がない税務調査もある

冒頭で、ほとんどの税務調査は事前に連絡があると書きましたが、一部例外があります。

飲食店や風俗店など現金を扱う商売などは、事前に連絡(事前通知)することで、事実を隠蔽されるなど調査の実施に影響があるため、連絡なしで調査が行われることが多いです。

このような事前通知なしの調査を無予告調査と言います。
無予告調査については、国税庁の資料「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」にもその旨が説明されています。

問20 実地の調査が行われる場合には必ず事前通知がなされるのですか。

実地の調査を行う場合には、原則として、調査の対象となる納税者の方に対して、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話等により、実地の調査を行う旨、調査を開始する日時・場所や調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などを通知します。

ただし、法令の規定に従い、申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると、①違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ、又は、②その他、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断した場合には、事前通知をしないこともあります。

なお、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしています。

無予告調査にも正しい対応があるため、詳細は別のブログで解説予定です。

調査日時以外の通知事項

調査の日程が決まると、調査対象期間や調査の対象となる帳簿書類など、調査日時以外の事項の説明(通知)を行う必要があります。

この通知は国税通則法という法律に基づき行われます。

(納税義務者に対する調査の事前通知等)
第七十四条の九 税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(税関の当該職員が行う調査にあつては、消費税等の課税物件の保税地域からの引取り後に行うもの又は国際観光旅客税について行うものに限る。以下同条までにおいて同じ。)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。
一 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二 調査を行う場所
三 調査の目的
四 調査の対象となる税目
五 調査の対象となる期間
六 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

(調査の事前通知に係る通知事項)
第三十条の四
 法第七十四条の九第一項第七号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 調査の相手方である法第七十四条の九第三項第一号に掲げる納税義務者の氏名及び住所又は居所
二 調査を行う当該職員の氏名及び所属官署(当該職員が複数であるときは、当該職員を代表する者の氏名及び所属官署)
三 法第七十四条の九第一項第一号又は第二号に掲げる事項の変更に関する事項
四 法第七十四条の九第四項の規定の趣旨
2 法第七十四条の九第一項各号に掲げる事項のうち、同項第二号に掲げる事項については調査を開始する日時において質問検査等を行おうとする場所を、同項第三号に掲げる事項については納税申告書の記載内容の確認又は納税申告書の提出がない場合における納税義務の有無の確認その他これらに類する調査の目的を、それぞれ通知するものとし、同項第六号に掲げる事項については、同号に掲げる物件が国税に関する法令の規定により備付け又は保存をしなければならないこととされているものである場合にはその旨を併せて通知するものとする。

調査を行う場所については、調査官は本店所在地を前提で通知することが多いです。

本店が店舗の場合、お客様が見聞きできる場所で調査することは、調査を受ける側と調査官の双方にとって都合が悪いため、税理士事務所や貸会議室などの場所にすることもできます。

調査の場所が不適当と考える場合は、事前通知の時点で変更したいと伝えることが望ましいです。

調査の目的については、「申告内容の確認」というテンプレートで通知されます。

調査の対象となる税目については、「法人税・消費税・源泉所得税など」とテンプレートで通知。

調査の対象となる期間については、直近3期分を伝えるとともに、場合によっては5期確認することがあり、不正があった場合は7期遡ることを通知します。
国税局によって、多少通知の仕方が変わります。

調査の対象となる帳簿書類その他の物件について、申告書・決算書・総勘定元帳・補助元帳・現金出納帳・賃金台帳・固定資産台帳などの帳簿書類、その他調査に必要と認められるものが対象となる旨通知されます。
こちらもテンプレートどおりですが、国税局によって多少通知の仕方が変わるかもしれません。

上記の調査手続(事前通知)に係る国税通則法の法令解釈通達や事務運指指針が、国税庁ホームページに掲載されています。
いずれも調査官たちが従うルールです。
事前通知の具体的な内容が書いていますので、必要に応じて以下をご確認ください。

【国税庁ホームページ 法令解釈通達 法第74条の9~法第74条の11関係(事前通知及び調査の終了の際の手続)】
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/03_2.htm

【国税庁ホームページ 調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)】
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sonota/120912/index.htm

【参考】税務署の内情

ここからは税務署の内情について、私が税務調査をしていたときの話や、調査官側の視点で書いていきます。

優秀な調査官の日程調整の仕方

優秀な調査官は、具体的な日程を説明した上で「調査を予定している」という説明の仕方をします。
このような説明を受けると、調査日程がすでに決まっているような印象になり、調査官の希望の日程に決まることが多いです。

優秀な調査官は、自分が優位になるような説明の仕方や対応方法を常に考え実践していますので、税務調査時の対応や社長の言動には注意が必要です。

税務調査が終わる時間について

税務署から会社までの距離が片道1時間以上かかる場合は、15時ぐらいに調査が終わるなど、終了の時間が早くなるケースが多いです。

その理由は、調査官はその日の調査が終わり税務署に帰った後、上司である統括官に調査の報告(復命と言う)を行う必要があるからです。

復命には時間がかかるため、16:30前後には税務署に戻る必要があります。
あまり遅くなると終業の17:00を超え、統括官に負担をかけてしまいます。

もちろん、調査で不正を見つけた場合は、17時を過ぎて戻ることもあります。
統括官に負担をかけることになりますが、統括官としても調査官が不正を見つけることは嬉しいことです。
遅く帰っても文句は言われませんし、ときには労いの言葉もありました。

まとめ

事前通知の正しい対応は、「調査の日程を1ヶ月程度先でリスケ」と解説しました。

リスケの際は、1ヶ月程度先で調査官が希望する日時にすることが望ましいです。
調査官としても計画を立てやすいからです。

再度になりますが、調査開始を1ヶ月程度先にリスケすることにより、次のことができます。

①税理士が社長や経理担当者に対して、税務調査の心構え・どのように対応するかなどをレクチャーできる
②税務調査で確認される帳簿書類等の準備を余裕をもって行える
③税務調査でよく確認される事項(期ずれ・棚卸資産の計上など)のチェックに時間をかけられる

当事務所では、上記①~③を確実に行うことはもちろん、元国税調査官の税理士による税務調査の予行演習も行っています。
初めて税務調査を受ける方の不安をなくした上で、税務調査に臨めます。

さらに、税務調査の確率を大幅に下げる「書面添付」にも力を入れていますので、税務調査関係は当事務所にお任せください!

今後も税務調査に関するブログを書いていきますので、定期的にブログをチェックしてもらえると嬉しいです。

ではまた!

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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