【税理士のひとりごと】中小企業診断士養成課程研修を受講していたときの話

みなさん、こんにちは!

最近、中小企業大学校東京校での「中小企業診断士養成課程研修」のことを振り返る機会がありました。
研修時代には、圧倒的熱量でチームコンサルティングをしたり、研修生同士でInstagramのいいね競争をするなど、めちゃくちゃ充実した期間でした。

今回はそんな研修時代のことを書いていきます。

中小企業大学校での研修生活、チームコンサルティングの内容、研修で学んだことなどを詳しく説明しています。
興味がある方は、ぜひ最後までお読みください!

目次

中小企業大学校とは

中小企業大学校とは 独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する人材育成機関です。

全国9か所の中小企業大学校や地域本部、Webを通して経営者や後継者などの方々を対象に多彩な研修メニューを提供しています。

東京校のみ、中小企業診断士養成課程があり、私は東京校で養成課程研修を受講して中小企業診断士登録をしました。

中小企業診断士養成課程とは

養成課程は、個々の中小企業の振興にとどまらず、地域・社会の発展に貢献するという公共的使命感に溢れる中小企業診断士の養成を目的としています。

事例に基づく演習や企業診断実習を通じて中小企業の経営診断に関する知識、手法を習得修得し、実務能力の高い中小企業診断士を養成する6ヶ月間のプログラムです。

中小企業診断士試験の第1次試験合格者が第2次試験を合格する代わりに、中小企業庁の示す基準に基づいた「演習」と「実習」を、一定の水準を満たして修了する必要があります。

「実習」については、中小企業診断士であるインストラクターたちから指導を受けながら、チームコンサルティングを行うものです。
後述しますが、この実習が養成課程研修の最大の壁と言えます。

修了後は中小企業庁へ申請することにより、中小企業診断士に登録されます。

養成課程研修を受講するきっかけ

国税局勤務時代に、お酒の免許の審査や酒税調査などを行う酒類指導官部門におり、運よく声がかかって研修を受講するに至りました。

国税組織内で養成課程研修を受講するための特殊なルートがあります。
そのレアルートに興味がある方はこちらのブログをご覧ください。

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お酒の職員が養成課程研修を受講する理由については、国税庁の使命が関係します。
国税庁の使命は3つあり、その1つに「酒類業の健全な発達」があります。

【酒類業の健全な発達】
1 酒類業の経営基盤の安定を図るとともに、醸造技術の研究・開発や酒類の品質・安全性の確保を図る。
2 酒類に係る資源の有効な利用の確保を図る

酒類業の健全な発達のために、酒類行政の基幹職員は所定の研修を受講の上、酒類行政事務や酒税事務に従事することとなっています。

その研修の1つに養成課程研修があるというわけです。

受講するのはどんな人たち?

研修を受講するため、全国から約90名の受講生が集まります。

受講生の過半数が金融機関に勤務しており、次いで信用保証協会や商工会議所勤務の方が多いです。
私が受講したのは7年前の養成課程第29期です。

この期の国税職員は私含め2名でした。
受講生だけでなく、インストラクターの方も「国税職員がなぜここに?」という空気になります。

その度「養成課程研修を受講するきっかけ」のところで書いた内容を説明していました。
なんだかんだ10回以上は説明したかな?

研修はAクラスとBクラスの2つに分かれ受講します。
「演習」はABクラス合同で行うものが多く、「実習」はクラス内でグループを編成して行います。

研修期間中は寮暮らし

中小企業大学校東京校には寮があります。
都内に住む研修生を除いては基本的に入寮します。
私も約6ヶ月間寮に入っていました。

東京校の住所は、東京都東大和市です。
最寄り駅は東大和市駅で、新宿から高田馬場経由で西武新宿線や西武拝島線に乗り換えます。
新宿からは45分前後で移動できます。

週末、研修の作業がないときには、研修生たちと東京各地に遊びに行ったり、当時住んでいたさいたま市の自宅に帰っていました。

寮の部屋はこんな感じです。

中小企業大学校ホームページより

水回りはユニットバスで、ビジネスホテルに近い暮らしができます。
ブログを書くようになって、日ごろの出来事などの写真をもっと撮っておけばよかった、と後悔することが多いです。

寮の建物の隣に食堂があり、朝食はビュッフェ形式で健康的な食事ができます。

私はヨーグルトが大好きなので、毎朝食器パンパンに盛り付けます。
そこにジャム2種類を周りが引くほど投入していました(甘党です)。

ビュッフェは人間の欲望が垣間見える、絶好の人間観察の場ですが、そのときの私は間違いなく観察される側でした。

研修序盤

研修序盤は座学が中心で、途中から「演習」メインで学びます。

活躍されている中小企業診断士の方が講師やインストラクターを務め、自身の専門分野について指導してくれます。
選ばれた診断士たちのプロの知識やノウハウを学べ、どの演習もめちゃくちゃ勉強になりました。

演習では、実際の支援ケースをもとに6~8名でのグループワークが多くありました。
問題点の洗い出しから戦略立案まで行います。

常にロジカルシンキングを意識させられる研修でしたので、慣れるまでは大変です。

私はグループワークが苦手で、挫折しそうになった時期もありました。
苦しい時には受講生たちに助けてもらいながら、乗り越えることができました。

特に関東の地銀のエースの石川ちゃんには救われました。
能力と人格を兼ね備えた研修生仲間たちにはリスペクトしかありません。

研修中盤~終盤

研修中盤~終盤は「実習」がメインです。

実習は計5回あり、流通業と製造業それぞれ前半と後半に分かれた実習と、各グループで業種やテーマが異なるソリューション実習という構成です。

流通業の実習グループ、製造業の実習グループ、ソリューションの実習グループに分かれます。
グループは8名程度の編成です。
班長、副班長、会計担当、資材担当、タイムキーパーなど全員に役割があります。

班長にはリーダーシップ、副班長にはサポート力や縁の下の力持ちとしての役割が求められます。
私は集団作業があまり得意でないため、班長や副班長を避けていましたが、最後のソリューション実習では副班長をしました。

流通業実習(前半)

流通業実習の実習先企業は主に小売店です。
私たちのグループの実習先企業は、関東にある地域密着型のスーパーでした。

前半の実習は5月の中旬から2週間程度の期間で行いました。
うち3日間は、実習先企業で次のことを行います。

①従業員ヒアリング(全従業員へのアンケートと面談)
②競合店調査(同一商圏内の競合店複数の調査)
③来街者調査(実習先付近や最寄り駅でのアンケート)
④来店者調査(来店客に対してアンケート)
⑤客同線調査(滞在時間、何を手に取ったか、買った商品は何か、どのような動線で回遊したかなど)
⑥客数、客層、通行量調査(見て数える)

土曜日と平日それぞれで調査し、朝昼夜などの違いや特徴なども調査・分析します。

①従業員ヒアリングについては、全従業員へのアンケートにより、「経営方針の浸透」「組織運営(経営・仕事の仕組み)」「コミュニケーション」「処遇」「満足度」「属性」のデータを収集し、従業員意識調査(モラール・サーベイ)集計ソフトを活用して調査・分析します。
「モラル君」というソフトで、調査数500社程度による指標との比較・分析もできます。
これだけでかなりのコンサルティングサービスといえる内容です。
従業員との面談も、第三者だからこそ言える本音をヒアリングでき、実習先の課題なども浮き彫りになりました。

②競合店調査については、同一商圏内のスーパーなど6店舗ほど調査しました。
品質・鮮度の比較としてレタスとバナナを購入して調査。
寮の私の部屋で管理・調査をしたため、日が経つにつれ匂いがきつかったです。
腐りかけてからは悪臭のため、ベランダに置かざるを得ませんでしたが、店によって品質・鮮度がかなり異なることを目の当たりにしました。
その他、精肉・鮮魚・惣菜の価格や品ぞろえのほか、POPの特徴と接客などの調査も行います。

③来街者調査については、実習先付近や最寄り駅などでアンケートを実施し、得られた情報を分析しつつ、その情報を組み合わせた分析もします。
アンケート項目は、事前にグループで検討した上、アンケートを実施します。
街を歩く人たちに声をかける際、怪しい者でないことを伝えるため、中小企業大学校の腕章を付けて「中小企業大学校の研修でアンケートを行っている」と説明し、アンケートに協力してもらっていました。
大学校からアンケート協力者への粗品が用意されています。
粗品はウェットティッシュ?か何かだったと記憶しています。

④来店者調査については、来店客に対してアンケートを実施し、来街者調査と同じように分析します。
日焼けするほどアンケートを集め、アンケート場所ごとの違いなども分析しました。
アンケート回答者の職業・年齢・住所・家族構成・交通手段も分析し、あらゆる角度から分析できるよう情報を集めました。

⑤客同線調査については、事前に店内のレイアウト図を作成し、来店客がどのような動線で回遊したかをレイアウト図に書いていきます。
腕章を付けつつ、怪しまれないよう来店客との距離を保ちながら、滞在時間・何を手に取ったか・買った商品は何かなどの情報をメモします。
来店客が目的の商品が売場になく退店する様子も見受けられ、品ぞろえや欠品の課題なども、この調査で浮き彫りにできます。

⑥客数、客層、通行量調査については、店前の人の流れを量的・質的に捉え、店前の通行者の属性についての傾向、時間帯による変化や違い、通行者の御社に対する関心や入店状況を明らかにする目的で実施します。
通行量については、通行方向別で人数をカウントするため、下の写真の器具を使います。

研修では2日間で約6,800名をカウントしました。
この作業でも日焼けをします。

前半の実習のまとめとして、前述の調査・分析で判明した、実習先の現状と問題点・課題について報告を行います。
実習先企業の組織・商品・販売促進・店舗などの観点から、詳細に報告を行うため、報告書として180ページぐらいにまとめつつ、実習先企業の社長たちにプレゼンを行いました。

インストラクター2名の指導のもと、事前の検討と準備をしっかり行った上、人と時間を投入しているため、報告内容の質はかなり高いです。
各種調査で得られた情報は多く、それらの組み合わせにより新たな問題点が見えるなど、チームコンサルティングの成果はこういうものだと、インストラクターの方たちから学びました。

前述の各種調査の後が大変で、分析結果から得られた問題点・課題を抽出する作業、それらを報告書にまとめる作業が最初にぶつかる壁です。
報告書は1人あたり20ページ~30ページを執筆するため、質と量の両方が求められます。

報告書は各自でどの部分を担当するか決めてから執筆に移ります。
この執筆作業は研修生ごとの能力差が表れるため、誰がどの部分を担当するかの選定が重要であり、遅れている人がいればフォローしながら進める必要があります。

過去の研修生には、この報告書の執筆がきつくて挫折した人がいます。
私たちのグループのインストラクターの方は大変厳しく、プロ品質を提供することを求められました。
そのため、執筆作業で3時間睡眠が数日続き、体力と精神力の限界突破が試されました。

結果的に限界を超えたタイミングがあり、その後の実習が楽になったため、その経験を最初にさせてもらえた機会はありがたく思います。
とは言え、徹夜で執筆したメンバーもいるぐらい、めちゃくちゃきつい実習でした、、、

流通業実習(後半)

実習の後半では、課題に対する改善策の提案を行います。
後半は7月中旬から2週間程度の期間で行いました。
うち2日間は、実習先企業で次のことを行います(私たちのグループの場合)。

①社長ヒアリング
②従業員ヒアリング
③先進店調査
④追加調査(実習先店舗の売場)

①社長ヒアリングと②従業員ヒアリングについては、実習先企業の組織・商品・販売促進・店舗などの観点から、詳細に調査・分析を行うため実施します。

③先進店調査については、特に成功している店舗(先進店)を対象に、その成功要因を分析し、実習先企業の店舗運営に活かすことを目的とした調査です。
私たちのグループでは、東京都内・神奈川県内・千葉県内のスーパー12店舗程度を調査しました。

後半の実習のまとめとして、実習先の課題に対する改善策について報告を行います。
実習先企業の組織・商品・販売促進・店舗などの観点から、詳細に報告を行うため、前半の報告内容を踏まえて報告書を作成します。
220ページぐらいにまとめつつ、実習先企業の社長たちにプレゼンを行いました。

報告内容は守秘義務があるため記載できませんが、次のような内容を報告します。

・消費者動向
・業界動向
・先進店調査の結果
・経営理念、経営ビジョン、ストアコンセプトの策定
・全社戦略の策定
・改善策(組織、商品、販売促進、店舗)
・中期経営計画書の立案、それを踏まえたアクションプランの策定

改善策については、インストラクターの指導が厳しく、ここまでするかというぐらいの内容をグループメンバー全員でつくりました。

各種調査結果や分析から導いた問題の真因から、ロジカルシンキングに基づく具体的な改善策の提案であり、実習先企業には大変喜んでもらいました。

とは言え、報告書の執筆は前半よりも厳しく、睡眠時間3時間以下の日々が1週間ぐらい続きました。
一部のメンバーの体調や精神状態はギリギリでした。
メンバー同士支え合いながら乗り越えましたので、戦友のような絆があります。

ブログを書いていて思い出しましたが、グループメンバー全員の最初の食事が栄養ドリンクという日が何度かあり、乾杯して一気飲みする儀式が恒例となっていました。

実習後半ではさらなる限界突破を求められ、がむしゃらに取り組んだ結果、中小企業大学校の演習のケース教材の内容を10年ぶりに変える成果となりました。

個人的な考えですが、若いときに限界突破の経験があると、他の人にはできない仕事の礎となり、その後の仕事に好影響を与えると思います。
安易に若い方に勧めることはできませんが、、、

流通業実習の様子↓

製造業実習

流通業実習と同じく、こちらもチームコンサルティングとして、質の高い報告書の作成とプレゼンを行います。
内容を書くと長過ぎるため、内容は省略します。
製造業実習もここまでするのか、というぐらいの調査・分析・改善策の提案を行います。

後半の実習先企業へのプレゼン後の打上げでは、研修生同士で泣きながら酒を飲むぐらい、こちらも圧倒的な熱量で取り組みました。

製造業実習でも多くの学びや気づきがあったため、機会があればブログに書こうと考えています。

ソリューション実習

ソリューション実習は最後に行う実習です。
流通業実習や製造業実習と異なり、各グループで業種や改善策のテーマが異なる実習です。
実習先企業の課題(要望)が事前に判明している状態であるため、今までの実習よりも期間が短いです。

私たちのグループにおいては、インストラクターの方の「振り返りを活用したチームビルディング」を自グループで実践し学べたことが、特に印象に残っています。
振り返りはチームとしても、個人としても大変重要ですので、こちらも機会があればブログに書こうと考えています。

また、このときのインストラクターの方から「10年連用日記」というものを教えてもらい、それがきっかけで日記を書くようになりました。
10年連用日記は振り返りに最適であり、また、忘れていたできごとに思いがけず「再会」できるのでおすすめです。

【ミドリオンラインストア 10年連用日記】
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Instagramのいいね競争

研修序盤の演習でSNSについても学びました。

中小企業診断士の講師の方とランチのときにお話をした際、Instagramの話題で盛り上がり、それがきっかけでInstagramが研修生の間で流行しました。

ちょっとしたゲームとしてInstagramのいいね競争をしていたところ、ちょっとしたブームに。
面白かったのは、多くのおっさんたちが承認欲求のとりこになっていたことです。
まぁ、私もその1人でしたが。

私含め週末には映える写真を求めて出かける研修生が多くいました。
「おっさん4人でパンケーキ」という研修生の破壊力のある投稿は今でも覚えています。

インスタバエ4匹(♂)がスイーツの写真を必死で撮っている姿は、周りから見たら奇天烈な光景に見えたことでしょう。

研修生時代、立川へよくスイーツを食べに行っていました↓

東京各地に出かける動機づけとして、Instagramのいいね競争はちょうどよかったです。
スイーツを食べながら全国から集まった研修生たちといろいろなお話ができました。

あと、SNSの承認欲求がどういうものか、実際にSNSをやってみて初めて理解ができました。
個人的にSNSは事業活動やブランディングなどに必要なものの、幸福度を下げる要素もあり、若年層を中心にスマホ認知症が増えていることもあるため、使い方には注意しないといけないと感じます。

研修を振り返ってみて

圧倒的な熱量で、限界を超えながら、実習先企業がより良くなるための調査・分析・改善策づくりの経験は、養成課程研修の醍醐味と言えます。

特に実習では人生の中でもトップクラスの熱量で臨んだため、自身の成長につながりました。
論理的な思考がかなり磨かれ、当事務所のサービスである「書面添付」や「補助金申請」の業務に活きています。

研修の機会を与えてくれた国税の職場には感謝です。

実習の時期に共に過ごしたメンバーは戦友としての絆があります。
今でも研修生メンバーとは連絡を取り、近くにいるメンバーとは食事に行くことや、仕事関係でもお世話になることがあります。

ブログを書いていると、当時を思い出し、しばらく会えていないメンバーに会いたくなりますね。

中小企業診断士養成課程研修修了式後に撮った製造業実習メンバーの写真↓


7,600字超と長いブログとなりましたが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございます!

また、気が向いたときに「税理士のひとりごと」を書いていきます。

ではまた!



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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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