【必須の決算対策】役員賞与の支給(事前確定届出給与に関する届出)

法人の経営者や役員の方たちは役員賞与の支給を受けていますか?

税務署への届出手続を行えば、役員賞与を経費(損金)にできます。

顧問税理士から役員賞与の支給の提案がない場合は、王道の決算対策がされず、大変もったいない状態です。

節税効果も高いため、法人の経営者であれば絶対に知るべきです。

この機会に役員賞与について詳しく学び、役員賞与の支給を積極的に活用しましょう!

目次

役員賞与とは

役員賞与とは、毎月定期的かつ定額で支払われているもの(定期同額給与)以外のものです。

毎月の定期同額の給与の他に、例えば6月と12月などの特定の月に増額支給するものも、役員賞与に含みます。

法人税法においては、役員賞与も役員給与に含むものとして整理されています(平成18年税制改正以降)。

ただし、従業員の賞与と同じく、臨時的に役員に支給できるものであるため、実務においては引き続き役員賞与と表現することが多いです。
このブログでも役員賞与と表現して解説します。

役員賞与を経費(損金)にするためには、株主総会で決議し、議事録の作成とともに、「事前確定届出給与に関する届出」を行った上、届出どおりの日付と金額に基づいて支給する必要があります。

この届出を行わずに役員賞与を支給することも可能ですが、その場合は経費になるものの、損金となりません。
損金とは申告段階の経費のイメージです。

したがって、届出を行わず役員賞与を支給すると、その分が課税されることとなります。

事前確定届出給与に関する届出について

この届出書は所轄の税務署に提出します。

届出書表紙の様式はこちらです。
事前確定届出給与を支給する役員ごとに提出する、届出書付表の様式はこちらです。

届出書の提出時期については、次のとおり細かく定められています。
大まかなイメージとしては、決算に係る定時株主総会から1ヶ月以内に提出するということです。

事前確定届出給与に関する届出の提出時期

1 株主総会等の決議により役員の職務につき「所定の時期に確定した額の金銭又は確定した数の株式若しくは新株予約権若しくは確定した額の金銭債権に係る法人税法第54条第1項に規定する特定譲渡制限付株式若しくは同法第54条の2第1項に規定する特定新株予約権を交付する旨の定め」(以下「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」といいます。)」をした場合(以下の2又は3に該当する場合を除きます。)
株主総会等の決議をした日(同日がその職務の執行を開始する日後である場合にあっては、当該開始する日)から1月を経過する日。ただし、その日が職務執行期間開始の日の属する会計期間開始の日から4月(法人税法第75条の2第1項各号又は同法第144条の8において準用する同法第75条の2第1項各号の指定を受けている法人にあっては、その指定に係る月数に3を加えた月数)を経過する日(以下「会計期間4月経過日等」といいます。)後である場合には当該会計期間4月経過日等

2 新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務につき「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」をした場合
⇒その設立の日以後2月を経過する日


3 臨時改定事由(法人税法施行令第69条第1項第1号ロ(定期同額給与の範囲等)に規定する役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情をいいます。以下同じ。)により当該臨時改定事由に係る役員の職務につき「所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定め」をした場合
⇒次に掲げる日のうちいずれか遅い日
イ 上記1に掲げる日(上記2に該当する場合は、2に掲げる日)
ロ 当該臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日
(注) 役員の当該臨時改定事由が生ずる直前の職務につき「定め」があった場合には、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を使用してください。

私は顧問先様の決算申告の報告のタイミングで、次の事業年度の役員給与と役員賞与の支給額について、基本的にはお客様と一緒に検討します。

事前確定届出給与(役員賞与)のポイント

事前確定届出給与(役員賞与)にはポイントが複数あります。

届出した場合でも支給ゼロが可能

事前確定届出給与に関する届出をした場合、届出どおりの日付と金額に基づき、役員賞与を支給することとなりますが、支給ゼロとすることが可能です。

業績が悪い場合、届出したとおりの金額を支給をすることは難しいため、支給ゼロも認められます。

ここでの注意点として、あくまで届出どおりの役員賞与の100%を支給、または0%のどちらかです。
例えば、届出した役員賞与の50%だけ支給した場合は、届出したその役員に対する役員賞与のすべてが経費(損金)とならなくなるため、ご注意ください(複数回の役員賞与は、支給時期によって損金になる場合がある)。

また、支給ゼロの場合は、支給しない旨の株主総会の決議(議事録)が必要です。

届出した内容の変更が一応は可能

届出した金額などを変更したい場合、変更届出をすることで変更が認められる場合があります。
臨時改訂事由、または業績悪化改訂事由に該当する場合に変更できます。

詳細は省略しますが、変更はハードルが高く、該当するケースが少ないため、実務で行うことはあまりありません。

損金算入の判断は役員ごとに行う

損金算入の判断は役員ごとに行います。

その根拠として、次の国税庁の質疑応答事例が参考になります。

【国税庁 質疑応答事例「「事前確定届出給与に関する届出書」を提出している法人が特定の役員に当該届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い(事前確定届出給与)」】
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/13.htm

決算月の支給がおすすめ

決算月に事前確定届出給与(役員賞与)の支給をすることをおすすめしています。

理由は、決算月にはその年の業績が明らかになる時期であり、業績がよければ届出どおり支給、業績が悪ければ支給ゼロが可能だからです。

年2回以上の支給の場合は、前述した支給ゼロの取扱いの注意点が増え、また支給もれや誤りのリスクも大きくなるため、年1回の決算月の支給をおすすめしています。

なお、複数回の役員賞与の支給について、次の国税庁の質疑応答事例が参考になります。

【国税庁 質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」】
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/16.htm

不相当に高額な支給はダメ

不相当に高額な役員賞与(役員給与)の支給は税務署(課税庁)から否認されるおそれがあります。

法人税法において「不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されない(法法34②、法令70)」とあるからです。

不相当に高額かどうかの判断はかなり難しく、課税庁との争いや裁判も多いため、税理士に相談しましょう。

社会保険料の削減になる場合もある

役員賞与の支給により、社会保険料の削減になることがあります。

賞与に係る社会保険料には上限があるからです。

役員給与と役員賞与を一定のバランスで支給することで、業績の良い会社や役員の経営に対する貢献度が高いなど役員給与が高めの場合、社会保険料の削減になり得ます。

なお、役員給与と役員賞与のバランスを極端に賞与に傾けた「社会保険料削減スキーム」というものがあります。
このスキームは、賞与に係る社会保険料の上限を利用したあからさまな社会保険料削減であり、近いうちに規制される見込みです。

当事務所では、あからさまな社会保険料削減のために、高額な役員賞与を支給することはおすすめしません。

まとめ

王道の決算対策である役員賞与の支給について解説しました。

今回このテーマを取り上げた理由は、今までの税理士変更の相談と経営者仲間からの情報から、8割ぐらいの会社経営者が事前確定届出給与(役員賞与)を知らないことがわかったからです。

役員賞与の支給は節税効果も高く、業績に応じて支給できる特性から、経営のモチベーション向上にもつなげられます。
スケジュール管理や手続など、手間とリスクは少しありますが、活用しない理由はないと言えます。

顧問税理士が事前確定届出給与(役員賞与)の説明や提案をしてくれない場合、お客様の事業の継続・成長・発展を真剣に考えていない可能性があります。
したがって、役員賞与の説明や提案の有無が、良い税理士か見極める判断の1つになると考えます。

会社の創業期や成長期には、顧問税理士により経営が変わることも多いです。
税理士により決算書や申告書の内容が変わり、資金調達のしやすさのほか、税務調査の結果も変わるからです。

顧問税理士として役員賞与の説明や提案は当たり前のことと考えていましたが、8割ぐらいの会社経営者が事前確定届出給与(役員賞与)を知らないことは、かなりの衝撃でした。

このブログを読まれた方は、役員賞与の活用とともに、今の税理士のままでよいか判断してみてはいかがでしょうか?

今後も参考となる情報を発信していきますので、定期的にブログをチェックしてみてください!


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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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