【福利厚生費】ランチ補助の会社負担は月3,500円まで!?

現在、「福利厚生の充実」のニーズが高まっています。

人材採用、社員の定着のために福利厚生を充実させる会社が増えています。
食の福利厚生としてランチ補助をする会社も増えてきました。

働く人たちにとってランチ補助があると嬉しいですよね。
最近では、社員食堂がない会社でも、近隣の飲食店を社員食堂の代わりに使えるサービスも登場しています。

ランチ補助などの食事代は、福利厚生の要素がありますが、従業員への給与の要素もあるため注意が必要です。
今回のブログでは、福利厚生として会社がランチ補助をする場合の税務の取扱いを解説します。

目次

そもそも福利厚生費とは

福利厚生費とは、企業が従業員の生活の安定・向上を目的に、給与や賞与とは別に支出する費用のことを指します。
業務とは直接関係しない費用で、飲食代・健康診断費用・社宅費用・レクリエーション費用などがあり、範囲はかなり広いです。

福利厚生費の要件は3つあります。

①賃金ではない(現物支給であること)
②全従業員を対象としていること
③金額が社会通念上、妥当であること

上記の要件を満たせば福利厚生費として認められます。
交際費の範囲は税法で定義されていますが、福利厚生費の範囲は税法で定義されていないため、まずは上記の要件を満たすか確認する必要があります。

その上で、食事代や社宅費用など税法の基準に合うかどうか検討・確認します。
具体的には、所得税法において非課税の範囲・基準が定められています。

範囲外や基準を超えるものについては、従業員に対する給与とみなされ所得税の課税対象となります。
国税庁の『源泉徴収のあらまし』の「Ⅱ 給与所得の範囲」の項目にて、20ページ以上にわたり課税・非課税の取扱いが細かく書かれています。

【令和7年版 源泉徴収のあらまし】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/aramashi2024/index.htm

なお、個人事業主の場合、福利厚生費は家族以外の従業員がいる場合で、その従業員のために支出した費用に限り認められます。

ランチ補助について

ランチ補助(食事代)の要件について、前述した福利厚生費の要件に加え、次の2つの要件があります。

①従業員が食事代の半分以上を負担すること
②会社負担額が1人あたり3,500円/月(税抜)以下であること

会社負担額の計算式

会社負担額=実際にかかった食事代-従業員が負担した金額を差し引いた金額


会社負担額が3,500円/月(税抜)以下であれば、会社負担額の全額が福利厚生費として認められます(給与として所得税が課税されない)。
3,500円の判定は消費税を除いて判定します。

具体的な判定は次のURLのとおりです。

【国税庁タックスアンサー 食事を支給したときの非課税限度額の判定】
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594-1.htm

テイクアウトは消費税8%、店内飲食は消費税10%ですので、少し計算の手間があります。
10円未満の端数切捨てにも注意が必要です。

会社負担分が3,500円を超えた場合、給与課税の対象となります。
対象となるのは超えた部分ではなく、会社負担分の全額であることには注意が必要です。

ランチ以外の食事代について

残業時の食事代

残業時の食事代は全額福利厚生費として認められ、所得税の課税もありません。
通常の勤務時間となるランチと、通常の勤務時間外である食事で取扱いが異なります。

会議時などの食事代

弁当で食事しながらの会議や打ち合わせ時の食事代のほか、取引先などと飲食店で食事する場合の食事代は「会議費」として認められ、所得税の課税もありません。

これらは単なる食事代ではなく、業務を円滑に行うための費用だからです。

※取引先などと飲食店で食事する場合、一定のものは交際費になる場合あり

まとめ

福利厚生費の要件やランチ補助の詳細を解説しました。

福利厚生費は、税法にて所得税が課税されない範囲が細かく定められています。
福利厚生を充実させる際は、非課税の範囲を確認した上で、導入することが望ましいです。

今回取り上げたランチ補助は、従業員の経済的負担の軽減につながる仕組みです。
従業員同士でランチをすることでコミュニケーションが活発になったり、健康管理においても良い効果があります。

会社にとっても、福利厚生費を計上することで節税につながります。

食の福利厚生について調べたところ、電子マネー型のICカードで食事補助を行い、事務手続の手間がほとんどないサービスがあるなど、かなり勉強になりました。

今後、所得税が課税されない範囲で福利厚生を充実させることが経営課題の1つになるかもしれません。

ちなみに、食事代の3,500円の基準は、1984年の税制改正で引き上げられた後の金額です。
その後、約40年引き上げられていません。

賃上げや物価高騰の現在、食事代の基準額を引き上げる必要があると考えています。
都心部でのランチは1,000円を超えがちですので、従業員が半額を負担する場合、3回に1回程度しか補助が受けられない計算になります。

近いうちに、税制改正の1つに食事代の基準額の引き上げが入ることを期待しています。

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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