【税理士事務所選び】決算書や試算表は誰が作るかで違う

意外かもしれませんが、決算書や試算表(月単位の決算書)は誰が作るかで内容がかなり違います。

決算書は事業年度ごとに作成するものであり、決算書をベースに法人税などの申告書を作成します。
当然、決算書の内容が違えば、申告書の内容も違ってきます。

税理士事務所にレシートや請求書などの書類を丸投げしているから安心というわけではありません。
税理士や事務所の担当者が、事業の内容と取引の内容を知らずに処理すると、正しくない処理が発生するおそれがあります。

正しくない処理が積み重なれば、税務調査の確率も上がります。
むしろ丸投げはリスクになっている場合も・・・

今回のブログでは、決算書や試算表は誰が作るかで違う理由を解説します。

目次

決算書や試算表は誰が作るかで違う理由

決算書や試算表は誰が作るかで違う理由は、税理士や事務所の担当者によって処理や判断が変わるからです。

最もわかりやすい事例を紹介します。
製造業であるにもかかわらず、決算書の一部である「製造原価報告書」を作成していない事例です。

「製造原価報告書」は製造業特有の決算書で、損益計算書を補完する役割を持つものです。

ここで「製造原価」とは、製品の製造にかかった費用を指します。
材料費、労務費、経費の3つに分類して計算します。

製造業者は合理的な経営判断を行うために、製造原価について正確な情報を把握する必要があります。
利害関係者である取引先や金融機関と情報を共有のためにも製造原価の把握が必要です。

したがって、「製造原価報告書」の作成は必須。
製造原価報告書なしに、生産性向上や利益拡大は不可能と言えます。

製造原価報告書を作成しない税理士は、はっきり言って論外です。
「税理士は税金の計算だけすればいい」「客の事業などどうでもいい」と考えている税理士だからです。

実際にそのような税理士は一定数存在します。
私も税理士変更の相談で遭遇しましたし、お世話になっている中小企業診断士の方の関与先の事例でもありました。

ちなみに、製造原価報告書の作成について、上場企業は義務ですが、中小企業は義務ではありません。
製造原価報告書がなくても、申告書の作成や税金の計算はできます。

製造原価報告書を作成しない税理士は、そこにあぐらをかいているんでしょう・・・

レシートなどの書類を丸投げするリスク

レシートや請求書などの書類を税理士に丸投げしている経営者の方も多いと思います。
創業期には丸投げすることも選択肢になりますが、長期的に丸投げすることはおすすめしません

理由は2つあります。

1つ目は、経営判断が遅れるからです。
書類の丸投げは税理士事務所の作業が終わった後でしか、正しい経営判断ができません。

一般的に税理士事務所の作業が終わると、試算表(月単位の決算書)が作成され、経営者に報告されます。
確定申告などの繁忙期には、試算表の作成が遅れたり、そもそも試算表の作成がなかったりすることもあります。
そのため、経営判断が遅れてしまいます。

2つ目は、処理・判断誤りのリスクがあるからです。
レシートなどの書類を丸投げすることは、税理士事務所側にとっては作業に時間を費やすこととなります。
その作業に追われた結果、処理・判断誤りが生じるからです。

確定申告などの繁忙期にはそのリスクが高まります。

処理・判断誤りが生じると、正しくない処理に基づき試算表や決算書が作成されます。
正しくない試算表や決算書で行う経営判断は正しいものとは限りません。
そのため、正しい経営判断ができないリスクにもつながります。

お客様が会計処理を行う自計化の場合、税理士事務所は会計処理のチェックや訂正に時間を費やすため、処理・判断誤りが生じにくい傾向にあります。

ただし、税理士事務所によりバラツキがあります。
顧問料が安ければ、安かろう悪かろうの品質になりがちですので要注意です。

良い税理士を選ぶために

良い税理士を選ぶためには、税理士が「お客様の事業の内容」と「取引の内容」を理解しようとしているかが重要です。

事業の内容や取引の内容について、税理士と頻繁にやり取りをしていない場合は、会計処理などの精度は低いでしょう。
なぜなら、会計処理や税務の判断で「実態がどうか」で判断するものがかなり多いからです。

最もイメージしやすい会計処理として、「〇〇費」などの勘定科目の選び方があります。
税理士や事務所の担当者が取引先の名前と金額だけを見て、この勘定科目だろうと推測で選んで処理することも可能です。

金額が小さいものであれば、勘定科目が正しくなくても、そこまで問題にはなりません。

ただ、推測して処理することが常態化するとどうなるか?
決算書の数字が正しくないため、事業の実態を反映しないものとなってしまいます。

事業の実態が正しく反映されないと、経営判断はもちろん経営分析も正しく行えません。
そもそも数字が正しくないため、前期比何%の数値もあまり意味を持たないからです。

経費削減などの取組をする場合は、正しい数字を把握することがスタートになるため、取組を始めるまでに余計な時間や労力がかかってしまいます。

税理士が「お客様の事業の内容」と「取引の内容」を理解していれば、勘定科目を正しく選ぶことができます。
お客様が会計処理を行う自計化の場合には、お客様が正しく会計処理ができるように指導することもできます。

勘定科目の選び方は税理士によって違う「処理や判断」の一例です。

その他にも、複数の処理が認められる場合には、金融機関の評価が高まるような処理方法を選択することもできます。
税務調査の観点からも、調査対策しながら処理や判断を行った上で決算書・申告書を作成することもできます。

今回のブログでは詳しく紹介しませんが、決算書の表示の場所や表示の仕方にも工夫が可能です。

工夫することで各種の利益率が高まるなど、決算書を見る利害関係者たちに良い印象を与えられます。
もちろん、融資を受けやすくなるなどのメリットもあります。

別のブログで決算書の表示について取り上げる予定です。

良い税理士は「税金を計算するためだけに決算書を作成しない」と言えます。

まとめ

決算書や試算表(月単位の決算書)は誰が作るかで内容がかなり違います。

残念ながら、税理士が作成する決算書の多くは、単に税金を計算するためだけに作成され、事業の経営成績と財政状態が正しく反映されていません。

減価償却費などを毎月計上せずに、試算表を作成している税理士も一定数います。
そのような税理士が作成する試算表や決算書では正しい経営判断はできません。

それだけ、税理士が与える事業の継続・成長・発展への影響は大きいと考えています。
決算申告書の作成を行う税理士は、経営者の最も身近な相談役だからです。

前述した製造業であるのにも関わらず製造原価報告書を作成しない税理士や、まったく経営相談ができない税理士と顧問契約されている方は、税理士変更した方がよいかもしれません。

その際は当事務所を候補の1つに選んでもらえると幸いです。

私たちの事務所では、事業の継続・成長・発展につなげるサポートのほか、高品質な決算申告にこだわっています。
自計化の仕組みにより、お客様の入力した会計データを確認、必要に応じて修正を行う「監査」の仕組みを構築しています。

一定以上の金額の取引については、請求書を確認するなど、独自の監査の仕組みにより、質の高い決算申告書を作成しています。
質の高い決算書により、金融機関からの信頼はもちろん、補助金や税制優遇の活用にもつながっています。

税理士を選ばれる際は、税理士や事務所の担当者が取引の内容について、しっかりと確認する仕組みがあるか確認しておきたいところです。

税理士がお客様の事業の継続・成長・発展への想いがあるかも、税理士選びの判断に加えてみてはいかがでしょうか?

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。
業界の手本と言える高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、出身地である八尾市にて独立開業。
現在、法人の税務顧問に特化した税理士事務所と、酒類販売業免許専門の行政書士事務所を経営するとともに、令和7年度 大阪市産創館の経営サポーターとしても活動。

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