業績の良い会社などに対し、金融機関と大手税理士法人がタッグを組んだ提案がよく行われています。
具体的には、金融機関が「事業承継(税金)対策として、持株会社を作りましょう」という提案です。
私が知る限り、すべての提案は金融機関が得をする提案となっています。
長期的な視点が欠けるなど、全体最適となっていないため要注意です。
そのような提案があったときには、顧問税理士である町の税理士に相談することとなります。
しかし、町の税理士が提案内容の是非を判断できず、お客様からの信頼を失い、顧問契約が解除されるケースがあります。
このような金融機関の提案営業は、町の税理士つぶしと言われています。
今回のブログでは、金融機関と大手税理士法人がタッグを組んだ提案の実態や、町の税理士はどう対応すべきかなどを解説します。
金融機関の提案の実態
金融機関の提案の背景には融資したい思惑があります。
持株会社の設立には融資が必要です。
なので、業績が良い会社に「事業承継(税金)対策として、持株会社を設立しましょう」と提案してきます。
その提案資料は大手税理士法人が監修しています。
大手税理士法人にとっては、相続税のシミュレーションや持株会社設立のスキーム作成の報酬が狙いです。
金融機関と大手税理士法人はウィンウィンの関係です。
提携して積極的に業績が良い会社に提案をしてきます。
もちろん、事業承継ではなく、租税回避が目的であれば、税務調査等で否認されるリスクがあります。
そのため、提案資料には「実際に申告する際や、本資料に記載されているスキームを実行される際は、公認会計士・税理士・弁護士などの専門家に必ずご相談ください。」と強調して書いてあります。
このようなスキームは、高度な知識が求められる大手税理士法人の得意分野のため、町の税理士には厳しい相談内容と言えます。
私の経験から言えること
私の経験から言えるのは「提案内容に素直に従うべきではない」ということです。
提案内容が本当に自社にとってよいものか検討する必要があります。
実際にお客様のところに何度も銀行から提案があり、その都度提案資料を読みました。
会社のための提案と説明されますが、私が知る限り、金融機関が得をする提案しかありません。
提案内容にはいろいろなパターンがあります。
かなり難しい内容のため、今回のブログでは省略しますが、最近あった提案だけ紹介します。
最近あった提案では、株式交換による持株会社化がありました。
株式交換のため、表面上は融資なしに持株会社ができるものです。
融資が前提でない提案と思うかもしれませんが、株式保有特定会社(会社の総資産の50%以上が株式等で占められている会社)に該当しないように、資産のバランスを変える「株特外し」が前提となっており、そこで融資を狙うというものでした。
このような持株会社の設立などは「組織再編」と呼ばれる分野です。
組織再編に対応できる税理士は少数ですので、高度な提案内容と言えます。
私も組織再編の本で勉強し、組織再編に詳しい方からアドバイスをもらって、正しい判断ができました。
私の過去の経験から、次の提案には要注意です。
①過度に不安をあおる
②短期的な視点のみの提案
①については、多くの提案では、自社の株価が上がる=税金の負担が重くなることが強調されています。
相続税含めた事業承継の対策ができていれば、株価が上がることは必ずしも悪いことではありません。
②については、短期的な視点での提案を実行した結果、その後の変化に対応できず後悔する事例も起きています。
節税が目的であり、全体最適とならない提案には要注意です。
その分、税務調査等で否認されるリスクがあります。
金融機関から提案があったとき、本当に自社にとってよいものか判断するために、顧問税理士に相談することとなります。
町の税理士はどう対応すべきか
町の税理士は、提案内容をいったん持ち帰り、勉強して理解を深め、提案内容の良い部分と悪い部分をお客様に説明すべきです。
それが難しい場合は、提携や協力関係にある税理士に、提案内容の是非の検討・判断を依頼すべきです。
実際には、そこまでしている町の税理士は少ないようです。
入力代行など作業に時間をとられている町の税理士は、高度な税務の知識や経験が足りなかったり、相談に対応する時間がないからです。
そうすると、お客様の対応がおろそかになり、お客様から頼りないと思われ、顧問契約の解除に至るケースがあります。
金融機関の提案営業は町の税理士つぶしと言われていますが、お客様目線で考えると、町の税理士側のサービスにも問題があるかもしれません。
まとめ
金融機関と大手税理士法人がタッグを組んだ提案には注意が必要ということ、それを受けて町の税理士はどう対応すべきか解説しました。
提案の背景には何かしら提案する側にメリットがあります。
多くの金融機関は会社の5年後・10年後・さらにその先のことなど気にしていないです。
5年後には担当者も支店長も異動するからです。
提案の内容は専門用語だらけで、多くの経営者の方はチンプンカンプンです。
「会社のために、金融機関は提案してくれている」と安易に流されてはいけません。
町の税理士つぶしになっている現実も説明しましたが、考え方を変えると、このような提案があったときに、顧問税理士がどう対応するかによって、税理士が頼りになるか見極めるきっかけとなります。
そういう意味では、外部からの提案も悪いものとは限りません。
今回のブログのように、リアルな情報や、経営者の方に注意喚起したいものがあれば、随時取り上げていきます。
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