「このパソコン、経費で落ちる?」15万円のPCと応接セットでわかる、損しない資産計上のルール

「このパソコン、15万円だけど一括で経費にしていい?」

「応接セットは、テーブルと椅子を別々に計上して30万円未満にできない?」

決算時期が近づくと、経営者や経理担当者の方からこうした質問が多くなります。

固定資産の購入は節税対策の定番ですが、実は「単位の数え方」と「処理方法の選び方」を間違えると、思わぬ税金がかかったり、無駄な手間が増えたりすることをご存知でしょうか?

今回は、意外と知られていない「資産計上の判定単位」と、法人税・償却資産税をトータルで考えた「賢い選択」について解説します。

【2026.4追記】
令和8年度税制改正により、少額減価償却資産の特例が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられていることにご注意ください。

目次

その備品、「1個」と数えるか「1組」と数えるか?

まず最初に迷うのが、「何を1つの単位とするか」です。

これが10万円未満なら全額経費(消耗品費など)にできますが、超えると資産計上が必要になるため、まさに死活問題です。

税務上のルールは以下のようになっています。

【資産判定のルール】

「通常1単位として取引されるもの」や「一体として機能するもの」ごとに判断する。

法人税法基本通達 7-1-11より要約)

よくある質問:応接セットの場合

例えば、椅子1脚が2万円でも、テーブルと椅子4脚の合計が30万円を超える場合はどうなるでしょうか?

  • 機能の一体性
    応接室において、テーブルだけ、あるいは椅子だけでは「応接」という機能を果たさない。セットで初めて機能
  • 取引の慣習
    通常、デザインや高さが調整されたセットとして販売・購入

以上から、原則として「一式で30万円以上の資産」として扱い、資産計上する必要があります。

個別に判定できる「例外」もある

もちろん、実態によっては個別に判定できるケースもあります。

  1. 機能的に独立している ⇒ ロビーの待合椅子のように、特定のテーブルとセットではなく単体で使用するもの
  2. 買い足し・修繕 ⇒ 破損した椅子を1脚だけ買い替える場合(修繕費や消耗品費)
  3. 場所が異なる ⇒ 同じ日に購入しても、テーブルは会議室A、椅子は会議室Bで使うなど、セットとしての実態がない場合

金額の壁と4つの選択肢

「単位」が決まったら、次は金額による処理の分岐です。金額に応じて、大きく4つのコースがあります。

金額(単位ごと)区分処理のポイント
10万円未満少額減価償却資産全額経費
10万〜20万円未満一括償却資産3年間で均等償却
★償却資産税がかからない隠れたメリットあり!
30万円未満中小企業特例(少額減価償却資産)年間300万円まで即時全額経費
※ただし注意点あり(後述)
それ以上一般の減価償却資産耐用年数に応じて通常の減価償却を行います。

最大の落とし穴!「即時償却=正解」ではない理由

ここが最重要ポイントです。

「30万円未満の特例を使って全額経費にしました!節税完了!」

これ、実は半分正解で半分間違いなんです。

法人税は減るが、地方税(償却資産税)がかかる

中小企業の特例(30万円未満の即時償却)を使うと、法人税の計算上は経費になり利益を圧縮できます。しかし、地方税である「償却資産税(年率1.4%)」の対象になってしまうのです。

10万~20万円未満の「一括償却資産」を選ぶことで、償却資産税は非課税(ゼロ)になります。

(例)15万円のパソコンを買った場合

特例を使う(即時償却)
・今期の法人税は減る
・しかし、毎年1.4%の償却資産税がかかる(&申告の手間あり)

一括償却を使う(3年償却)
・経費化は3年かかる
・しかし、償却資産税はずっと0円(&申告不要)

償却資産税が発生するラインにも注意

償却資産税は、会社や個人事業主が事業に使っている「固定資産(モノ)」にかかる税金です。たとえば、パソコン、会社の看板、お店のエアコン(埋込型でないもの)、工場で使う機械などが該当します。

この税金には、負担が軽くなるように「最低ライン(ボーダーライン)」が設けられています。それが「課税標準額(年率1.4%をかけるベース)150万円」です。あなたが持っている事業用の固定資産の合計額(価格)のことです。

この合計額が150万円未満の場合は、償却資産税ががかかりません。行政の効率化と小規模事業者の負担軽減を図るため、このようなルールとなっています。

どっちを選ぶべきか?

会社の状況によって「正解」は変わります。以下の基準で選んでみてください。

パターンA:赤字、もしくは利益が少ない会社

👉 迷わず「一括償却」を選びましょう。

赤字なら法人税の節税メリットはありません。それなら、コストである「償却資産税」をゼロにする方が賢明です。

パターンB:利益がたくさん出ている会社

👉 「30万円未満の特例」を検討しましょう。

償却資産税(数千円~数万円)を払ってでも、今期の法人税(利益の約30%)を減らしてキャッシュを残したい場合はこちらが有利です。ただし、固定資産台帳への登録と毎年の償却資産税申告の計算などが必要になります(顧問税理士が対応することが多いです)。

まとめ

実務を見ていると、「とりあえず30万円未満だから即時償却」これが一番多い判断です。

でもその結果、
・毎年の償却資産税申告が増える
・台帳管理が複雑になる
・数年後に「実は一括償却の方が安かった」と気づく

…というケースも本当に多いです。

資産の処理は、節税+地方税+事務負担まで含めて考えてこそ意味があります。

「この備品、どう処理するのがベスト?」
「今年の利益水準なら、どれを選ぶべき?」

そんな判断に迷ったら、決算前でも、購入前でも構いません。
実態に即した処理を一緒に整理しますので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

関東の国税局・税務署で10年以上、法人の税務調査や酒類業免許審査担当などに従事。在籍中に中小企業診断士登録。その後、高付加価値サービスを提供する税理士法人で実務経験を積み、より多くのお客様に向き合うため独立開業。
顧問先様の「税務調査ゼロ」を掲げ、年間30件以上の創業支援を手がけるとともに、酒類販売免許に強い行政書士として活動。令和7年度からは大阪産業創造館の「経営サポーター」として大阪の経営者を多角的に支えている。

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